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牧野知弘の「どうなる!? おらが日本]#2 2018年日本の不動産はこうなる(4/5ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2018/02/20

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「金利」や「有事」などの外部環境が不変であっても、日本の不動産が2018年も安泰である保証はどこにもない。

現在都心5区を中心に航空母艦のような巨大ビルの建設ラッシュだが、低金利の金融環境でじゃぶじゃぶお金を借りられるのならば、誰でも巨大なオフィスビルを「こしらえる」ことはできる。アクセルさえ踏めばどんなに脆弱なシャシーの車でも一応スピードは上がるのだ。だが、問題はそこに誰が入るかだ。

大企業でなければ高い賃料を負担してこの巨大ビルに入居することはできない。ところが日本の大企業の多くは実は国内ではなく海外で稼いでいる。日本に多くのオフィスを借りる必要のある企業は少なくなっているのが実態だ。

現在建設中のビルのほとんどは既存ビルの建替えだという。今のオフィスビルマーケットの好況は建替えのために既存ビルから追い出された企業がやむなく現在空いているビルに入居して、空室率が低くなっているにすぎない。2018年後半以降続く航空母艦ビルの竣工は、テナント需要が伸びない日本では、再び多くの空室をマーケットに生み出すことになりかねないのだ。

2019年10月の消費税率アップ前の駆け込み需要を期待するマンション販売についても楽観できない。建設費がうなぎ上りの中、マンション販売各社は郊外マンションに注力しているが、全体価格に占める建物代の割合が80%程度を占めるマンションで、土地代が安い郊外に戦線を拡大しても、全体の価格は建設費に引っ張られて高くなってしまい、郊外のマンションを買わざるを得ない一般庶民には「お高い買い物」となってしまう。ましてやこれだけ都心居住が進む中で郊外部のマンション需要は窄まるばかりだということだ。

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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