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事故物件公示サイト運営者、大島てる氏に聞く(1)

【大島てる】圧力があっても削除しない! 大島てるが事故物件にこだわる意外な理由とは?(2/3ページ)

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「投稿制」にしたことで情報の質が高まった

——自己物件、訳あり物件を集めるために「投稿制」にされた理由と、そのメリットについて教えてください。

大島:投稿制にしたのは平成23年のことで、それまでは自分たちだけで情報を収集して公開していました。ちなみに公開したのは、そうすることで「ここは間違っている」「ここが漏れている」などといった指摘を受けられることを期待してです。そして、情報の正しさ・詳しさ・漏れのなさ・速さのいずれをも改善するためには、情報を収集するのが自分たちだけに限定されないことが必要、とは開設当初から考えていたことです。

実際に、投稿制にしたことで情報の質は総合的には飛躍的に高まっています。仮に間違った情報が掲載されても、いまは多くの人がサイトをチェックしているので、すぐに指摘されるようになっているからです。ですから、こちらで情報が正しいかどうかの判断を事前にすることはありません。

たとえば事故があったマンションまでは特定できているけれども部屋番号がわからないといったケースでは、そのマンションの住人から「(うちの部屋ではなくて)○○号室だ」といった指摘が寄せられますし、事故があって住人が救急車で搬送されたけれども死亡したかどうかが定かでないというケースが掲載されれば、「息を吹き返して無事だった」といった情報が送られてきます。

 

「事実を把握できたものは載せる」、基準はそれだけ

——宅建業法では、どんなものが事故物件に当たるのか、心理的瑕疵のある物件とはどんなものなのか定義されているわけではないそうですが、「大島てる」に情報掲載の基準はあるのですか?

大島:「事実を把握できたものは載せる」、基準はそれだけです。ご存知のように、宅建業法では事故物件について告知義務が定められていますが、サイト運営の方針は告知義務とは切り離して考えています。

たとえば、孤独死で、死後すぐに発見されたケースなどについては、「告知義務はないのだから削除しろ」という苦情が寄せられることがあります。そもそもその告知義務の範囲自体が非常にあいまいなのですが、不動産業界では孤独死は告知する義務はないとする認識があるのです。しかし、仮に告知義務がなかったからといって、サイトに載せてはいけないということとイコールではありません。

孤独死で、当日発見の場合、翌日発見の場合、あるいは死後相当期間経っていても遺体が傷んでいない場合、どこから事故物件として掲載すべきか判断することなどできません。仮に、「死後1日なら事故ではないが、2日経っていれば事故として掲載する」という基準をつくったとしても、なぜ1日ならセーフで2日経つとアウトなのか合理的な説明などできませんし、説明できないことはやらないというのが私の考え方です。

ですから、「なぜこの物件は載っているのに、あの物件は載っていないんだ」という問い合わせがあるのですが、「把握できたものは掲載しているけれど、把握できていないものは掲載していない」ということでしかありません。

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