BOOK Review――この1冊 『教養としての「地政学」入門』(1/2ページ)
BOOK Review 担当編集
2021/06/23
『教養としての「地政学」入門』 出口治明 著/日経BP 刊/定価1980円(税込)
新聞やニュースで、よく「地政学的に考えると」という表現を見たり聞いたりする。地政学とは、気候や産出される資源、国境を接する国々との関係といった地理的条件に規定される政治の在り方を研究する学問だ。
では地政学的にみたとき、日本はどんな条件に置かれているか。そして、その条件を踏まえたうえで、今後どんな外交カードをきれるのか――。
例えば、沖縄に集積する米軍基地をどう位置付けるか。はたまた、中国による尖閣諸島に領海侵犯、韓国による竹島の不法占拠などにどう対処すべきか。日米同盟の行方についても、よくよく考えなければならない。
そうした事柄を自分の頭で考えるために必要な知識を、立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏が解説するのが本書だ。地政学的に重要と思われる世界史上の事柄を、古くはメソポタミア時代にまでさかのぼって網羅的に解説。地政学の観点から歴史を俯瞰的に捉える眼力を養ってくれる。
本書で主に登場するのは現在の中国やトルコ、スペイン、フランスなど、世界の覇権を握ってきた国々やその周辺国家だ。
歴史を振り返ることで、世界史の主役となった国々がユーラシア大陸に数多くあること。資源が豊富にあり、多くの人口を養える肥沃な大地を擁するという地理的条件と、深く関連していることが分かる。アメリカが世界の表舞台に登場し始めたのは近代に入ってから。20世紀には、食物や資源が豊富にとれる広大な国土を強みに、西欧諸国を追い抜く経済成長を成し遂げた。経済的優位性に支えられた世界最大の軍事力は、今なお揺るぎない。
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ウチコミ!タイムズ「BOOK Review――この1冊」担当編集
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