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相続法改正シリーズ #2 実家の不動産相続に大きな影響を与える可能性――「遺留分侵害額請求権」(3/3ページ)

藤戸 康雄藤戸 康雄

2021/08/30

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遺留分侵害額請求権についての注意事項

① 権利を行使できる期間
遺留分侵害額請求権(旧制度の遺留分減殺請求権も同じ)は、遺留分権利者が相続の開始および遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから、1年間行使しないとき、または相続開始のときから10年を経過したときに消滅する。(民法1048条)

※少しややこしいが知っておくべきこと
上記の期間内に、事例の「(次男が長男に対して)遺留分侵害額請求権を行使する。750万円を払え」と内容証明郵便などで請求したとする。兄が、金融機関などから借り入れをしてでも払えば円満に解決するが、何らかの事情があって払ってもらえない場合はどうなるだろう? この場合は、「金銭債権の消滅時効」に気を付ける必要が出てくる。

冒頭で述べた通り、「約40年ぶりの相続法改正」があったのだが、それに先立って、同じ民法でも「約120年ぶりの債権法改正」があったのだ。「金を払え」というような金銭債権の請求権は、民法改正前は10年の消滅時効期間だったのだが、2020年4月1日以降に行使した金銭債権ここでは遺留分侵害額請求権)については、消滅時効期間は5年となったのだ(民法166条1項1号)。従って、相続発生から1年以内に遺留分侵害額請求権を行使した次男は、長男が任意に750万円を支払わない場合は、遺留分侵害額請求権を行使してから更に5年以内に訴訟等の法的手続きを起こさなければならないことに注意が必要だ。

② 新旧制度の適用が異なる相続の発生時期
改正相続法の施行日(2019年7月1日)以降に発生した相続については、新法の遺留分侵害額請求の規定が適用されるのだが、改正相続法施行日以前に発生した相続については旧制度である遺留分減殺請求の規定が適用となることにも注意が必要だ。

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この記事を書いた人

プロブレムソルバー株式会社 代表、1級ファイナンシャルプランニング技能士、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士

1961年生まれ、大阪府出身。ラサール高校~慶應義塾大学経済学部卒業。大手コンピュータメーカー、コンサルティング会社を経て、東証2部上場していた大手住宅ローン保証会社「日榮ファイナンス」でバブル崩壊後の不良債権回収ビジネスに6年間従事。不動産競売等を通じて不動産・金融法務に精通。その後、日本の不動産証券化ビジネス黎明期に、外資系大手不動産投資ファンドのアセットマネジメント会社「モルガン・スタンレー・プロパティーズ・ジャパン」にてアセットマネージャーの業務に従事。これらの経験を生かして不動産投資ベンチャーの役員、国内大手不動産賃貸仲介管理会社での法務部長を歴任。不動産投資及び管理に関する法務や紛争解決の最前線で活躍して25年が経過。近年は、社会問題化している「空き家問題」の解決に尽力したい一心で、その主たる原因である「実家の相続問題」に取り組むため、不動産相続専門家としての研鑽を積み、「負動産時代の危ない実家相続」(時事通信出版局)を出版、各方面での反響を呼び、ビジネス誌や週刊誌等に関連記事を多数寄稿。

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