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中国・デジタル人民元とは何か その仕組みと狙い(3/4ページ)

小川 純小川 純

2020/12/09

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個人の監視と行動制限も容易になる社会

このデジタル人民元とはどういったもので、デジタル化することでどのようなことが起こるのだろうか。

そもそも紙(貨)幣は国家が通貨発行権に基づき中央銀行から発行されるものである。この点についてはデジタル通貨とはいえ、国家の信用がバックボーンにあることに変わりはない。

ただ、デジタル通貨は民間企業が発行するものもある。例えば、まだ発行はされていないが、何かと話題になる「リブラ」はFacebook(厳密にはリブラ・アソシエーションだったが、12月1日、運営母体とデジタル通貨の名称をディエムに変更するという動きがあった)が発行元になっている。すでに取引されているデジタル通貨の中で時価総額上位のリップルはリップル社、テザーはテザー社が発行元になっている。

デジタル人民元は紙の紙幣や、すでに出ている民間のデジタル通貨と違って、誰が何を、いつ、いくらで買ったかということが記録される。言い換えれば匿名性がなくなるということが特徴だ。

「デジタル人民元は、個人のスマートフォンのウォレットで管理させます。中国では携帯電話の番号と個人が紐付けられているので、それで何を買ったか、デジタル人民元が誰から誰に移動したかがわかるわけです。しかも、何をいくらで買ったかわかるだけでなく、デジタル人民元のやり取りは特殊なサーバーを介すことで、すべてのお金を管理することが可能になる。そして、デジタル人民元がやり取りされると、そのサーバーに個人の情報が溜まっていく。デジタル人民元のテストでは、鉄道に乗れるだけといった特定のものだけ使えるようにするなど、さまざまなことが試されたようです」(粕谷さん)

実際、中国政府はデジタル人民元について「制御可能な匿名性」と「統一的なウォレットをつくる」としており、これによってお金の動きをつかみ、偽造通貨など不正を防止するとしている。

「中央で管理するサーバーでは個人の生年月日、出生地、家族構成、学歴、仕事、年収、犯罪歴などの個人データが入っていて、これに買い物の履歴といったお金の動きも蓄積されるようになる」(粕谷さん)という。その結果、個人に対しても設定次第で商品を購入させないようにすることも可能になるというわけだ。

「個人の監視ばかりに目が向きがちですが、マネーロンダリングの監視や、犯罪者を鉄道に乗れなくするなど行動制限をすることもできます」(粕谷さん)

まさに究極の監視社会という感じだが、中国ではすでに個人データを元にした与信管理が行われている。それが、アリペイが提供している「芝麻(ジーマ)信用」というもの。

これは15年からはじまったもので、アリペイでの支払履歴、個人の学歴・職歴、住宅や自動車などの資産内容、SNSの交友関係を元にスコアリングを行い、その点数によってさまざまな優遇サービスや融資額、金利が決められるというもの。そして、そのスコアリングが就職や結婚にも影響するともいわれている。

とはいえ、中国国内ではそれに対して批判などはあまりなく、むしろ、自分のスコアがいくつか、交際相手選びの1つの指標になっているのだ。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。

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