中国・デジタル人民元とは何か その仕組みと狙い(4/4ページ)
小川 純
2020/12/09
ブロックチェーンのいいとこ取り
これまでデジタル通貨、中でもビットコインやイーサリアムはブロックチェーン技術(分散型台帳)を使うことで、中央の管理者がいないことを最大の特徴としていた。こうした分散型デジタル通貨だからこそ、発行者の都合や、規制を受けないというのがメリットとされてきた。
「中国はブロックチェーンの利点と欠点をよく見ていたようです。ブロックチェーンの最大の欠点はデータが重く、セキュリティとトランザクションを兼ね備えさせるのは難しいという欠点がありました。そこでデジタル人民元ではブロックチェーンを使うところ使わないところをミックスさせています。ここがデジタル人民元のすごいところなんですね」(粕谷さん)
デジタル人民元の実用化を急ぐ、中国の思惑は世界経済を自らの制御下に置くことにあるといえるだろう。それは米ドルに変わって、デジタル人民元を新たな基軸通貨にしようという狙いがあるからだ。
「人民元については共産党の幹部ですら信用がないため米ドルに替えている。それがデジタル人民元になっても信用できないという人もいます。でも、これは大きな間違い。デジタル化されることで、すべての購買データが蓄積され、個人のお金動き、資産がわかりそれを管理運営できる――それこそが人民元の価値になる。これはアナログ通貨にはできないことです」(粕谷さん)
日本を含めた先進国のCBDCへの対応はまだまだだ。
日本では10月に日銀から『中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針』というレポートが出された。
その内容は、CBDCの基本的な説明と求められる特性として、①ユニバーサルアクセス、②セキュリティ、③強靭性、④即時決済性、⑤相互運用性について解説を行っているのみで、来年度には日銀内での実証実験を行うとしている。
海外に目を転じても、米国はFRB(連邦準備制度理事会)のボストン連邦準備銀行がマサチューセッツ工科大学とデジタル通貨に関する実験を開始したと発表がなされている。EUについてはいくつかの国で研究が行われてはいるもののEUとしてのアクションは見られない。
「各国の中央銀行でもデジタル通貨への対応はしています。日本での実証実験は2年後ぐらいになるのではないかと見られています。これは、中国が2017年にやっていたレベルです」(粕谷さん)
12月1日、中国では輸出管理強化の新法が施行され、日本企業にどのような影響が出るのか懸念されている。デジタル人民元が実用化された場合、当然ながら輸出入の決済手段として、デジタル人民元の使用が求められることが予想される。そのときどう対応するのか。
日本の通貨は飛鳥、奈良時代は国内で鋳造された和同開珎が使われていたが、平安時代から戦国時代までは中国から輸入した宋銭、永楽通宝など銅銭を使ってきた歴史がある。令和の現代、400年前のような銅銭からデジタルに変わった中国の通貨を使うなんてことも想像してしまう。
この記事を書いた人
編集者・ライター
週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。