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まちと住まいの空間 第26回 「ブラタモリ的」東京街歩き③――高低差、崖、坂の愉しみ方:赤坂・六本木編(4/4ページ)

岡本哲志岡本哲志

2020/07/31

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番組が収録された時、まだ出版されていなかった初版の『タモリのTOKYO――』には狸穴坂が選ばれている。勾配が星3つ、湾曲は星2つと、坂の形状では低い評価だが、江戸情緒と由緒は5つ星。坂の持つ雰囲気に、タモリさんはぞっこんということなのか。番組で放映されなかったシーンで、タモリさんは狸穴坂の魅力を語っていたことを思い出した。もう今となっては記憶があやふやだが、語っていた場所はロシア大使館前あたりだったことから、カメラを回していなかった。

担当ディレクターは、谷が確認できる鼬坂の坂上でタモリさんたちと岡本との出会いの場を設けた。このあたりの地形の複雑さを用意した粘土を使ってタモリさんと語り合ってもらいたかったのだろう。狸穴坂ではなく、鼬坂を選んだ要因でもある。09年、10年ころのブラタモリの台本はいたってアバウトで、突然と台に乗った粘土が渡されたに過ぎない。ディレクターの意図を汲み取れなかった私の失態だが、粘土を使っての面白い話に展開せず、番組では立体地図で補われた。

尾根沿いの通り(外苑東通り)を渡って三年坂へ。10年時点の三年坂上からの眺めは、我善坊谷の窪地に成立する住宅地があり、斜面上の台地に戦前の建築である麻布郵便局、背後に東京ミッドタウンと六本木ヒルズの超高層ビルが見えた。


再開発前の三年坂上から見た我善坊谷

この時点で、すでに土地の買収があらかた終わろうとしていた。タモリさんもこのあたりを何度もリサーチしていたようで、「ここも駐車場になったか」とつぶやく。19年秋に訪れた時には、我善坊谷(がぜんぼうだに)に建っていた家々がすっかり更地となり、台地上の麻布郵便局も解体が進んでいた。


我善坊谷坂から見た再開発エリア

麻布郵便局の跡には、300mを超える超高層ビルが22年に完成する予定である。

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この記事を書いた人

岡本哲志都市建築研究所 主宰

岡本哲志都市建築研究所 主宰。都市形成史家。1952年東京都生まれ。博士(工学)。2011年都市住宅学会賞著作賞受賞。法政大学教授、九段観光ビジネス専門学校校長を経て現職。日本各地の土地と水辺空間の調査研究を長年行ってきた。なかでも銀座、丸の内、日本橋など東京の都市形成史の調査研究を行っている。また、NHK『ブラタモリ』に出演、案内人を8回務めた。近著に『銀座を歩く 四百年の歴史体験』(講談社文庫/2017年)、『川と掘割“20の跡”を辿る江戸東京歴史散歩』(PHP新書/2017年)、『江戸→TOKYOなりたちの教科書1、2、3、4』(淡交社/2017年・2018年・2019年)、『地形から読みとく都市デザイン』(学芸出版社/2019年)がある。

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