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『ブラタモリ』白金編1

「伝説」を考えさせられた時空の亀裂と「伝説」(4/4ページ)

岡本哲志岡本哲志

2019/11/01

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白金はどういう町かわかりますか


写真4、明治学院大学

「しろかね」は「シロガネ」でないことがわかったとして、白金はいったいどういう町かわかるだろうか。番組スタッフは、白金の町を徘徊し、都立庭園美術館、自然教育園、聖心女子学院、明治学院大学、八芳園、旧服部金太郎邸など豪邸や、まとまった自然、ミッションスクールが狭いエリアに密度高く、しかもゆったりと立地する白金エリアをすでに何回も歩き回っていたようだ(写真4)。


写真5、行き止まりの幹線道路

また、計画倒れに終わっている2つの道の痕跡に着目する。これに関してはテレビ番組になりそうな気配を充分に感じ取ったと思われる(写真5)。

桜が奇麗に咲き誇る4月2日、下見に同行した時、統括責任者の方が「一つひとつは実に魅力的だし、興味深い。ただ、それでどうなのという感じで、ばらばら感があって番組としての物語をイメージできない」とこぼす。私は都市形成史が専門で、もちろんテレビ番組の制作者ではない。当然だが、番組制作に携わる人たちもそのようなことを期待してはいない。

下見では、すでにスタッフの人たちがブラタモリ的に、高低差や面白そうな坂道を事前に歩いていたようで、それらをなぞった。面白くない。江戸市中の山の手は、台地部に武家地、低地部に町人地がつくられ、それを結ぶように魅力的な坂道ができる。しかし、白金はそうではない。魅力的な空間は台地部だけで、低地部は歴史の痕跡が希薄である。地形が入り組む谷筋の低地は、よほど湧水が豊富だったようで、いつまでも開発されずに残り続けた。もう少し、江戸時代と現代を重ね、白金エリアの道の仕組みを探る必要があった。

このような状況で、「ブラタモリ・白金」の番組制作が具体化していき、ロケとなっていく。番組が放送される前に3回ほど歩いた白金は思いのほかミステリアスな凹凸の地形があり、個人的に大変興味深い白金編だった。そこで次回も白金について筆をすすめることにしたい。

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この記事を書いた人

岡本哲志都市建築研究所 主宰

岡本哲志都市建築研究所 主宰。都市形成史家。1952年東京都生まれ。博士(工学)。2011年都市住宅学会賞著作賞受賞。法政大学教授、九段観光ビジネス専門学校校長を経て現職。日本各地の土地と水辺空間の調査研究を長年行ってきた。なかでも銀座、丸の内、日本橋など東京の都市形成史の調査研究を行っている。また、NHK『ブラタモリ』に出演、案内人を8回務めた。近著に『銀座を歩く 四百年の歴史体験』(講談社文庫/2017年)、『川と掘割“20の跡”を辿る江戸東京歴史散歩』(PHP新書/2017年)、『江戸→TOKYOなりたちの教科書1、2、3、4』(淡交社/2017年・2018年・2019年)、『地形から読みとく都市デザイン』(学芸出版社/2019年)がある。

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