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増え続ける所有者不明土地、法律改正で止められるか(3/3ページ)

藤戸 康雄藤戸 康雄

2021/05/18

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利用できる新たな制度とは これから負動産を相続する人たちの心構え

これまでのように、民法・不動産登記法の改正や新法の制定された背景には、利用価値の低い負動産を引き取りたくない事情や、相続人間に円満にいかない訳があっていつまでも遺産分割がされないという事情がある。そして、相続した場合の登記には3年、遺産分割には10年という期限まで設定された。相続してからでは解決するまでの時間が限られているのだから、相続する前から、すなわち親が元気なうちから「誰も住む予定がない実家は将来どうしようか?」ということや、財産の多い少ないにかかわらず、「親の財産のことで揉めないためにはどうしたらよいか?」を関係者全員でよく検討しておくことが大切なのだ。

ただ、どうしても遺産分割の話し合いが長引いて、3年という相続登記義務期間内に実家の相続を誰にするかがまとまらないことも多いだろう。

そのような場合には、今回の法改正で新たに「相続人申告登記制度」というものができた。期限までに誰が相続するか決まらない場合に、相続人のうち一人だけでも(もちろん複数人でも)、登記簿の所有者に相続が発生し、自分が法定相続人であることを登記官に申し出ることによって、登記官が職権でその旨の登記をしてくれる。そのことによって「期限内の相続登記を行わなかったことに対する10万円以下の過料」を免れることができるのだ。後は粛々と遺産分割協議を行って正式な相続人が決まれば本登記に移行すればよい。必要なものは法定相続人であることが分かる戸籍謄本や申出人の住民票等が必要と目されるが、手続き費用を含めて詳細は23年度予定の施行を待たなければならない。

簡便な手続きなので費用などもそれほどかからずに「10万円以下の過料」を免れることは、利用価値の低い負動産を相続する人たちにとって朗報であろう。

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この記事を書いた人

プロブレムソルバー株式会社 代表、1級ファイナンシャルプランニング技能士、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士

1961年生まれ、大阪府出身。ラサール高校~慶應義塾大学経済学部卒業。大手コンピュータメーカー、コンサルティング会社を経て、東証2部上場していた大手住宅ローン保証会社「日榮ファイナンス」でバブル崩壊後の不良債権回収ビジネスに6年間従事。不動産競売等を通じて不動産・金融法務に精通。その後、日本の不動産証券化ビジネス黎明期に、外資系大手不動産投資ファンドのアセットマネジメント会社「モルガン・スタンレー・プロパティーズ・ジャパン」にてアセットマネージャーの業務に従事。これらの経験を生かして不動産投資ベンチャーの役員、国内大手不動産賃貸仲介管理会社での法務部長を歴任。不動産投資及び管理に関する法務や紛争解決の最前線で活躍して25年が経過。近年は、社会問題化している「空き家問題」の解決に尽力したい一心で、その主たる原因である「実家の相続問題」に取り組むため、不動産相続専門家としての研鑽を積み、「負動産時代の危ない実家相続」(時事通信出版局)を出版、各方面での反響を呼び、ビジネス誌や週刊誌等に関連記事を多数寄稿。

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