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サブリースで大家業をやる人に朗報(3/3ページ)

藤戸 康雄藤戸 康雄

2021/04/26

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これから新たに大家業を始める人たちへ

コロナ禍で経済の先行きの見通しが立たないなかでも、依然として相続税対策でアパートを建てることを検討することになる人も多い。またコロナ対策の名のもとに、日銀による金融緩和が継続されることで「ピンチはチャンス」と考え、新たに投資を始めるサラリーマンもいることだろう。「賃貸管理は日常的なトラブルが多いので煩わしい。空き室が出ても家賃が減る心配がない」ということで、とくに兼業で大家業をされる人のなかにはサブリース業者を利用する向きも少なからずあるかもしれない。

そのような人のために、今回施行されたサブリース新法で特に覚えておいてほしい箇所に絞って解説したい。

サブリースを検討する人が覚えておくべき重要ポイント

①用語の整理
サブリース新法では、聞き慣れない用語がでてくる。

・特定賃貸借契約:マスターリース契約といわれる。所有者(いわゆる大家)から事業者が「第三者(いわゆる入居者)に転貸する事業を営むことを目的」として締結される賃貸借契約

・特定転貸事業者:サブリース業者のこと

・勧誘者:サブリース業者と組んでサブリースによる賃貸住宅経営の勧誘を行う者。この勧誘者は、大家さんが適正な契約を行えるように、サブリース業者と共に、下記②③などの行為規制の対象とされる

②誇大広告の禁止
実際には家賃が減額されるリスクがあるにもかかわらず、「〇〇年間にわたり家賃は確実に保証される」という表示や、退去後のリフォーム費用や大規模修繕費などが大家の負担になるにもかかわらず、「契約期間中は家賃を受け取るだけ、費用負担がありません」などという、事実と著しく異なる表示は禁止される。

③不当勧誘の禁止
サブリースといえば、やはり「家賃が保証されている」というイメージがあるためか、これまで「まさか家賃が減額請求されるとは思わなかった」とか、「減額請求を断ったら業者から契約を解約された」というような大家の苦情が多かった。今後は、サブリースのメリットだけではなく「どのようなリスクがあるのか」を説明しない、あるは事実と異なる説明をするような「不当勧誘」が禁止される。

④契約締結前の重要事項説明義務
サブリーストラブルの多くは、足繁く通ってくる建築会社の営業マンや、近所で大家業をしている知り合いから「サブリースなら家賃が保証されているから大丈夫だよ。何も心配いらないよ」などと契約内容を詳細に吟味することなく、勢いや流れで契約をしてしまうことだという。サブリース新法では、「契約をするかどうか考えるための十分な時間(1週間程度といわれる)」をとって、契約前に「重要事項説明をする」ことが義務付けられる。説明される内容は多岐にわたるが、なかでも「設定する借上げ家賃の根拠」「家賃の減額リスク」「期間中の解約や更新拒絶に関するリスク」「維持保全の実施方法及び費用の分担割合」「転借人(入居者)の資格等(反社会的勢力の排除は当然として、学生の可否等)の条件に付いて」などについては、賃貸物件の経営の根幹にかかわるので大家さんは事前によく勉強してほしい。決して「流し読み」に付き合うようなことは避けてほしいものだ。なお、本気で勉強したい方は、国交省が出しているガイドラインがあるので参照してほしい。

サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン

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この記事を書いた人

プロブレムソルバー株式会社 代表、1級ファイナンシャルプランニング技能士、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士

1961年生まれ、大阪府出身。ラサール高校~慶應義塾大学経済学部卒業。大手コンピュータメーカー、コンサルティング会社を経て、東証2部上場していた大手住宅ローン保証会社「日榮ファイナンス」でバブル崩壊後の不良債権回収ビジネスに6年間従事。不動産競売等を通じて不動産・金融法務に精通。その後、日本の不動産証券化ビジネス黎明期に、外資系大手不動産投資ファンドのアセットマネジメント会社「モルガン・スタンレー・プロパティーズ・ジャパン」にてアセットマネージャーの業務に従事。これらの経験を生かして不動産投資ベンチャーの役員、国内大手不動産賃貸仲介管理会社での法務部長を歴任。不動産投資及び管理に関する法務や紛争解決の最前線で活躍して25年が経過。近年は、社会問題化している「空き家問題」の解決に尽力したい一心で、その主たる原因である「実家の相続問題」に取り組むため、不動産相続専門家としての研鑽を積み、「負動産時代の危ない実家相続」(時事通信出版局)を出版、各方面での反響を呼び、ビジネス誌や週刊誌等に関連記事を多数寄稿。

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