ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

サブリースで大家業をやる人に朗報(2/3ページ)

藤戸 康雄藤戸 康雄

2021/04/26

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

相続税増税対策に踊らされた人たち


©︎KAZUMA SEKI・123RF

都心部などの地価が高いエリアにそれなりの広さの土地を持っている人が亡くなると、想像もできないくらい莫大な相続税がかかることがある。そのため昔から「相続税対策にアパートを建てましょう」といわれ続けてきたものだ。

バブルが崩壊する前なら、大きな借金を背負ってアパートを建築しても、「土地神話」といって持っている土地の値段が上がり続けていたので、借金の返済に困っても土地を売ればなんとかなったものだが、バブル崩壊以降はそんな簡単な問題ではなくなった。相続税対策で相続税は減らせても、人口減少などでアパートの入居者が減ったり、毎年近隣に新築アパートが建ち続けたりしてアパートの家賃はライバル物件が増えるにつれて減額を余儀なくされるようになる。そうするとアパートの経営は苦しくなり、やがて新築するときに銀行から借りた金の返済に困るようになる。これはサブリースしていない一般の大家の場合である。

ところが、サブリース契約をしていた大家たちは「30年一括借り上げしますから安心してください」と有名な建築会社や上場企業から言われていたので、「30年間安心できる」と思い込んでいたのだが、実はそうではなかったから大変なのだ。サブリース会社は大手であっても大家との関係では「借主」として、「借地借家法」という強力な法律に守られた「弱者」として扱われる。したがって、賃料相場が大きく下落すれば「30年間賃料を固定する」などという契約は、法律上の権利によって反故にすることができてしまうのだ。

サブリース業者を規制する法律ができた背景

相続税対策でアパートを建てましょうという地主への提案営業自体は、かなり前から行われていた。したがって「借り上げ家賃が変わらないと思っていたのに、聞いていた話と違う」というようなトラブルも以前からあったし、それなりに裁判なども起こっていた。監督官庁である国土交通省にも多くの苦情が入っていたので手をこまねいていたわけではなく、規制する方法や体制も長らく検討されてきた。

そうしたところ、15年1月からの相続税の大幅な増税をネタにした「相続税対策にアパートを建てましょう」の大合唱がその前の年あたりから、ハウスメーカー、建築会社、不動産会社などの界隈からけたたましく叫ばれ、折しも黒田日銀の大規模金融緩和と歩調がピッタリあってしまった。

サブリース契約の多くは、契約から10年間は借上賃料が保証されているケースが多いが、くだんの15年相続税増税対策にアパートをサブリースで新築した物件がちょうど10年目を迎える25年は、各地で多くのアパートの家賃が引き下げられ、資金繰りに窮する大家が大量に出る恐れがでてきたのだ。前述の「かぼちゃの馬車事件」とは筋向きは異なるものの、賃貸住宅のサブリース問題であることに違いはない。

問題が噴出する前に、サブリース業者を規制するための法律が制定され施行されたのである。

次ページ ▶︎ | これから新たに大家業を始める人たちへ

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

プロブレムソルバー株式会社 代表、1級ファイナンシャルプランニング技能士、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士

1961年生まれ、大阪府出身。ラサール高校~慶應義塾大学経済学部卒業。大手コンピュータメーカー、コンサルティング会社を経て、東証2部上場していた大手住宅ローン保証会社「日榮ファイナンス」でバブル崩壊後の不良債権回収ビジネスに6年間従事。不動産競売等を通じて不動産・金融法務に精通。その後、日本の不動産証券化ビジネス黎明期に、外資系大手不動産投資ファンドのアセットマネジメント会社「モルガン・スタンレー・プロパティーズ・ジャパン」にてアセットマネージャーの業務に従事。これらの経験を生かして不動産投資ベンチャーの役員、国内大手不動産賃貸仲介管理会社での法務部長を歴任。不動産投資及び管理に関する法務や紛争解決の最前線で活躍して25年が経過。近年は、社会問題化している「空き家問題」の解決に尽力したい一心で、その主たる原因である「実家の相続問題」に取り組むため、不動産相続専門家としての研鑽を積み、「負動産時代の危ない実家相続」(時事通信出版局)を出版、各方面での反響を呼び、ビジネス誌や週刊誌等に関連記事を多数寄稿。

ページのトップへ

ウチコミ!