ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

牧野知弘の「どうなる!? おらが日本]#3 バブル崩壊後の不動産と今後(5/6ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2018/04/20

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

不動産証券化の隆盛

平成バブル崩壊後の不動産投資マーケットには大きな変化が訪れた。それまでのバランスシートでリスクの高い不動産に投資することの恐さを思い知らされた不動産業者は、資金を銀行などの間接金融に頼るのではなく、投資家をタニマチに仕立てて、彼らの資金を預かって投資を行うという不動産証券化の手法を開発する。

不動産は証券化という手法を通じてマネーマーケットと結びつき、世界の投資家から個人資金までを招き込んで不動産に投資することによって大きく拡大し始めたのだ。

2001年(平成13年)9月、東京証券取引所に日本ビルファンド投資法人とジャパンリアルエステート投資法人の2社が日本初の不動産投資信託(J-REIT)として上場を果たす。不動産証券化の手法はJ-REITのみならず、様々な形態の投資ファンドが組成され、国内外の投資マネーを日本の不動産マーケットに呼び込む流れを作り出すことに成功する。

日本の不動産マーケットはこれまでは、不動産業を営む大家が自らのファイナンスで投資を行ってきたために、たとえばテナントの賃料等の情報が開示されることはなかった。こうした「情報の非対称性」が不動産を胡散臭い、近づきがたい存在にしてきたが、証券化は幅広く投資家を募るにあたっての、不動産に関する情報開示が求められ、そうした意味で不動産事業の「開国」あるいは「民主化」につながったともいえるかもしれない。

しかしいっぽうで、不動産が金融という魔物と手を結んだことは、魑魅魍魎が跋扈する金融マーケットに不動産の世界が翻弄されることとなる。2008年(平成20年)に生じたリーマンショックは、投資家のお金を集めて運用してきた多くの不動産ファンドが甚大な影響を被ることになる。

次ページ ▶︎ | 不動産はソフトの時代へ 

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

ページのトップへ

ウチコミ!