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令和3年「建築着工統計調査報告」から分かる意外な事実

女性がハイヒールを脱ぐことには「理」も「利」もある 令和3年建築着工統計を考察(2/2ページ)

朝倉 継道朝倉 継道

2022/02/19

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ハイヒールを脱ぐに理あり

「非居住建築物(民間建築主)」の着工データを見てみよう。まずは全体分だ。

棟数 6万2165棟
(総)床面積 4万3874千㎡(前年比10.5%増 3年ぶりの増加)

ただし、ここでの「増」も繰り返すがあくまで前年(20)の落ち込みに対してのものだ。前々年分(19)と並べてみよう。

棟数 19年:7万793棟 /21年:6万2165棟
床面積 19年:4万3581千㎡ /21年:4万3874千㎡

このとおり、棟数では21年分が大幅に下回る。なお、6万2165棟というこの数字は、実にリーマンショック翌年(09)の6万3517棟にも及ばない。

一方、気がつくとおり、上記では床面積の数字にはあまり差が無い。両者はほぼ同じ程度といっていい。つまり、19年に着工された建物に比べ、(棟数の少ない)21年着工のそれらは、1棟あたりの面積が平均して広いことになる。そこで、面白い数字を引き出してみよう。民間非居住建築物の「使途別」それぞれ――すなわち事務所、店舗、工場、倉庫について、総床面積を棟数で割った数字を現在と過去とで比べてみる。現在=21年、一方過去は20年前の01年(平成13年)としてみよう。

事務所

01年 着工棟数 1万5765棟 床面積 7296千㎡ 1棟当たり 0.46千㎡
21年 着工棟数 1万89棟 床面積 7087千㎡ 1棟当たり 0.70千㎡

店舗

01年 着工棟数 1万7011棟 床面積 8037千㎡ 1棟当たり 0.47千㎡
21年 着工棟数 5364棟 床面積 4262千㎡ 1棟当たり 0.79千㎡

工場

01年 着工棟数 1万5496棟 床面積 1万1414千㎡ 1棟当たり 0.74千㎡
21年 着工棟数 6416棟 床面積 6752千㎡ 1棟当たり 1.05千㎡

倉庫

01年 着工棟数 2万3244棟 床面積 7053千㎡ 1棟当たり 0.30千㎡
21年 着工棟数 1万2861棟 床面積 1万3025千㎡ 1棟当たり 1.01千㎡

見てのとおり、すべての使途で「過去」の建物の方が狭い。さらに、もう5年さかのぼればこうなる(1996年)。

事務所 1棟当たり 0.41千㎡(01年よりさらに狭い)
店舗 1棟当たり 0.60千㎡
工場 1棟当たり 0.70千㎡(01年よりさらに狭い)
倉庫 1棟当たり 0.33千㎡

このとおり、21世紀に入ってから、あるいは平成の間、われわれの周りにあるこうした建物の構造に何が起こったのか、それが上記の数字からはとてもよく見てとれる。つまり、単純に人々の働く場所はこの20年くらいでまことに広くなった。なので、職場の中で人々が歩く距離自体、それに合わせて実際に増してもいるはずだ。

女性がオフィスではハイヒールをやめ、フラットなローファーやスニーカーに履き替えることは、健康上も完全に理(利)があるということだ。

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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