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八街市・小学生5人死傷の痛ましい交通事故と「非線引き自治体」が抱える苦悩(3/3ページ)

朝倉 継道朝倉 継道

2021/07/29

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今後を照らす希望かーー市街化調整区域化・逆線引き

さて、こうした八街市をはじめとする、非線引き自治体で目立つ交通事故リスクやインフラ問題などの課題については、個別・即効的な対策とは別に、やはり、将来を見据えた適切な計画が求められて然るべきだろう。

計画とは、要は、線引きのし直しのことだ。

この場合、市街化抑制のための市街化調整区域への区分を必要に応じて行うということになる。

ちなみに、一部の先進(というべきだろう)自治体で進められている「逆線引き」も、もちろん同じ方向にあてはまる。市街化区域を市街化調整区域に転換してしまうという、戦後行政史的観点からは、かなり大胆といってよい施策だ。

もっとも、こうした考え方については、たとえ芽が出ても、かつては強い抵抗に晒されたものだ。理由は、当然ながら、開発できる土地からできない土地へ移行させられることで、これらの所有者がもつ資産価値が大きく損なわれるからにほかならない。

しかしながら、当面続く日本の人口減少下において、過去の高度成長期やバブル期のような街の拡大が起こる可能性は、もはやいずれの地域においてもきわめて少ない。

また、そうした状況下にあっては、非線引き区域等での開発圧力への期待も、古い時代の夢として、今後はほぼ抱かれることがなくなるだろう。

そのうえで、スプロールした街を上手に畳んでいき、行政資源を必要な場所に効率よく集中させることは、産業、教育から、災害対策、はては野生動物被害対策にいたるまで、ありとあらゆる社会の課題に対する手当てにもつながっていくはずだ。

一方で、都市部にかさ上げされていくであろう資産収益からの分配をどうするかなど、今後の都市・地域行政、税制における英知の集めどころが、ここにはあるといっていいだろう。

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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