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八街市・小学生5人死傷の痛ましい交通事故と「非線引き自治体」が抱える苦悩(2/3ページ)

朝倉 継道朝倉 継道

2021/07/29

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八街市の交通事故発生率は2019年で県内10位

では、実際に非線引き区域に開発圧力がおよぶと、どういう現象が生じるのだろう。

答えとしては、開発が無秩序になる。

行政によるコントロールが徹底しないため、例えば、道路や上下水道などの生活インフラが行き届かない場所であっても、営利のままに開発が進められやすい。

その象徴的なかたちが、いわゆる「ミニ開発によるスプロール(無秩序拡大)現象」と呼ばれるもので、農村部で切り売りされた土地が小規模に宅地化され、広範囲にわたってバラバラに点在してしまう。

そのうえで、これらは、農村期以来の細い道で蜘蛛の巣状に結ばれるなどするため、そこが通学路となり、子どもたちの横を自動車がすれすれで走る状況が生まれたりもする。

そこで、これでは危険だということで、行政がこれらを拡幅、整備しようとしても、対象箇所が数多く、距離も長いだけに用地買収費用などが膨大となる。加えて、工事に要する時間もかさむことになるわけだ。

よって、こうした状況下にあっては、安全な道路づくりがなかなか進まないことになる。八街市は、このことについて長年悩み続けている代表的なまちとして、実はよく知られている。

なお、以下は千葉県全54市町村における、八街市の交通事故発生件数の順位と、その推移となる。これらのデータに、前述した同市における状況がどれだけ影響しているかについては、もう少し分け入った分析が必要となるが、参考として挙げてみたい。


※順位は人口1000人あたりの件数 出典/千葉県ホームページ「指標で知る千葉県」

なお、八街市では、16年にも今回の被害児童らと同じ小学校に通う生徒4人がトラックにはねられる事故が起きている。

地域の交通環境が抱える課題への意識が高い市民はおそらく多いはずで、そのうえで上記人口1000人あたりのデータの深刻さ、つまり「道路稠密な東京隣接3市に比べ交通事故発生率が一段高い」といった見方も、あって当然といえるだろう。

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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