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『サイレント・トーキョー』/追う者と追われる者のサスペンス、斬新なストーリーとアクションが見どころ(2/2ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2020/12/01

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クリスマスの東京を襲った連続爆破テロを描くサスペンス映画である。

原作は秦建日子の小説「サイレント・トーキョー And so this is X-mas」。秦はテレビドラマ『編集王』(00)『天体観測』(02)『ドラゴン桜』(05)等の脚本家として名を馳せ、小説家としてデビュー。デビュー作『推理小説』から始まる「刑事 雪平夏見」シリーズ5作が『アンフェア』シリーズ(06~15)としてテレビドラマ化され、劇場映画版も大ヒットを記録している。

監督はテレビドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』(07)を演出し、映画版の監督も務めた波多野貴文。

予測不可能なテロに多くの人々が翻弄されてゆくが、99分という比較的タイトな上映時間の群像劇となっており、犯人と犯行の動機にたどり着くまでの展開は極めてスリリング。波多野が『SP』で見せてくれた斬新なストーリーテリングとアクション演出の技は健在だ。

最大の見せ場は、爆発予告現場となった渋谷スクランブル交差点での大掛かりなモブシーンである。この場所で大勢の俳優とエキストラを使った撮影を行うことは不可能なので、栃木県足利市に巨大なオープンセットを組んで撮影されている。

かつて『踊る大捜査線』シリーズのスピンオフ作品『容疑者 室井慎次』(05)が福島県いわき市にオープンセットを建設し、新宿ALTA前から紀伊國屋書店、伊勢丹前に至る追跡シーンを撮影して観客を驚かせたことがあったが、本シーンのスケールはそれを凌駕している。リアルな迫力を生み出したスタッフと出演者の努力を称えたい。

映画的な見せ場も多い『サイレント・トーキョー』は、あくまで娯楽作品である。追う者と追われる者のサスペンス、そして謎解きを楽しめばよい。とはいえ、何やらキナ臭い世界情勢の下、本作の犯人の主張と各登場人物の思いをどう受け止め、咀嚼すればよいのか。私たち観客が試されている気がした。

『サイレント・トーキョー』
原作:秦建日子『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』(河出文庫刊) 
監督:波多野貴文  
脚本:山浦雅大
出演:佐藤浩市/石田ゆり子/西島秀俊/中村倫也/広瀬アリス/井之脇海/勝地涼
12月4日より公開
公式HP:https://silent-tokyo.com/

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この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

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