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街の人気も分かる「礼金」 あらためて知っておきたい礼金のエトセトラ

いまさらだけど「礼金」って何? まけてもらわないと損をするの? (2/2ページ)

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礼金はまけてもらわないと損?

そんな礼金だが、これをながく成り立たせてきた賃貸住宅における貸し手市場は、現在、大枠としては崩壊している。少子化や、長期にわたるわが国経済の低迷などを背景として、多くのエリア、マーケットにおいて、築年等の条件も絡むかたちで礼金はかなり設定しにくくなっている。

また、仮に設定する場合であっても、その全額を必ず手にしたいと考えているオーナーはもはや少ない。よって、もしも額面どおりに貰えたならばうれしいものの、値引きを求められれば100%の譲歩も含め、即応じるつもりでいるケースがいまは少なくないだろう。それよりも入居の確保こそが重要ということだ。

つまり、これを入居希望者側から見れば、「礼金は値引きを打診しないと確率的に損」ということになる。なので、その物件が本当に住みたい物件であるのならば、遠慮する必要はまったくない。「とても気に入ったので、礼金無しにしてくれませんか」「いくらか値引きしてくれませんか」と、堂々申し出てみよう。

ただし、絶対に値引きしてくれるだろうとの決めつけは当然よくない。物件の建つエリアが人気のエリアで建物は新築といったケースや、そこに春の繁忙期も重なるといった場合など、値引きの打診を断っても、オーナー側としては「次の客がすぐに見込める」状態になっている。

さらには、物件のステイタス上、高い礼金でも気にせず払える入居者を厳選するためあえて礼金を設定しているような物件もあるので、その辺を心得たうえで「真摯に」「明るく」打診には臨んでほしい。

例えば、身も蓋もない話になるが、その入居希望者がいかにも真面目そうで、受け答えも明るく、勤め先もそれなりの会社で給料も高い――などといった場合、不動産会社(仲介会社・管理会社)もオーナーも、「優良入居者だ。この客は逃したくない」と、判断したりする。ほかの相手の場合はお断りする礼金の値引きを快くOKするといったことも、もちろんありうるだろう。

礼金は誰が貰っているのか?

礼金は、前述のとおり家主に対する謝礼金としておそらく発生した。ほぼそれで間違いないはずだ。また、文字の上ではいまも賃貸オーナーに対する「お礼」を意味するものとなっている。

しかしながら、現状はどうかといえば、不動産会社が契約時に入居者から預かった礼金は、あとでオーナーに渡される場合もあれば、不動産会社の手元に残る場合もある。つまり、後者では多くの場合、礼金はオーナーが彼らに与えるインセンティブ(ADなどという)の原資となっている。

もっとも、それをもって礼金がオーナーに渡っていないと決めつけるのは短絡的な話で、例えば上記のケースで入居者に対し礼金の値引きが行われた際、逸失金額をオーナーがあとで不動産会社側に対し補填していれば(そのことによりインセンティブが満額支払われるかたちになれば)、その取引において礼金はやはりオーナーが受け取る立場に立っていたことになる。

他方、そうした手当てがされないのならば話は変わる。その礼金はオーナーへの謝礼を装いつつ、実は不動産会社が受け取る収益であったということになるだろう。

ともあれ、こうしたことからもよくわかるのは、礼金がやはり現在は「謎のお金」になってしまっているということだ。字面は「お礼」でも、その意味は時代とともに間違いなく失われている。

一方、これを裁判所がいうとおり賃借権(相続もされる立派な財産だ)を買うための権利金だとすれば、簡単に値引きされたり、設定しないゼロ物件が多数あったり、世間の扱いはやたらと軽すぎる。

礼金で街の人気を測る

最後に、礼金が賃貸住宅市場において、街の人気を測るバロメーターのひとつとなる話を付け加えよう。

いまは検索性にすぐれた不動産ポータルサイトというものがあるため、例えばある駅の周辺エリアにおいて礼金を設定している物件がどのくらいあるか、設定していないいわゆる「礼0」物件がどのくらいあるか、数も割合もたちどころに導き出すことができる。

つまり、これで街・駅の人気の一端を知ることができる。やり方は簡単で、検索条件を操作し、その「街・駅」エリアの賃貸物件における礼金設定率を調べてみればよい。

そこで出てきた数字が高ければ(礼金設定率が高ければ)、その街・駅エリアは、オーナー側が市場に対し強気に出られているエリアだ。逆に低ければ、そこはオーナーが強気には出られていないエリアだ。

すなわち、前者は礼金を払ってでもその場所の物件に住みたいとするニーズが高い、貸し手優位なエリアであることが想像出来、後者はその逆であることが推測できるといったかたちとなる。

なお、この数字は、当該エリアにおける物件の数にも影響される。いわゆる「人気の街」でも、物件が大量供給されていて競争が厳しいと、礼金設定率には重しがかかりやすくなる。つまり、そこを加味しての物件全数を見ながらの判断も必要だ。

参考までに、2月下旬に某大手サイトから拾った数字を挙げてみよう。

場所 礼金設定率 掲載総物件数
恵比寿 62.9% 約8,500
吉祥寺 55.3% 約8,100
横浜 39.9% 約5,500
大宮 44.1% 約3,400
千葉 32.1% 約4,500 

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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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