予算20万円! 古民家をDIYでエコリノベしたら見えてきた「リノベーション田舎づくり」の可能性(4/5ページ)
馬場未織
2017/02/16
エコリノベがなぜ、街づくりにつながるのか
「エコリノベ」がなぜ、街づくりにつながるか。
それは、地域の居心地をよくするからです。
“地域の居心地”というのは、外部空間や商業空間といったパブリックスペースの話だけではありません。ひとりひとりの家の居心地が、基本です。そして、「エコリノベ」によって、家の居心地をよくすると同時に地域のつながりを強めることが可能になるのです。
年間5000人近くにものぼるヒートショック(家のなかの急激な温度差がもたらす身体への悪影響)で亡くなる方が1人でも減らせれば、どんなにいいか。
里帰りする子や孫から「おばあちゃんち、寒くて行きたくない…」なんて思われることが減れば、どんなにいいか。
移住トライアルをしてみたはいいが「家が寒すぎる」ということに心が折れて移住を断念する人が多いという現実。こんなところでのつまづきを減らせたら、どんなにいいか。
そのために、大きなお金をかけずに断熱改修をするノウハウが大事になってきます。
業者に発注すると1棟700万円ほどもかかるといわれる断熱改修も、上記のような方法であればかかる実費は20万円程度。
さらに大事なのは、エコリノベのノウハウを地域で共有すること。学びあいながらひとつひとつの家の居心地をよくして、暮らしのクオリティをあげていくプロセスでは、お金で解決していたら絶対に手に入らないものが手に入ります。
それは作業による連帯感であり、達成感の共有であり、結果生まれる仲間意識です。地域のつながりを強めるために、といってヘタなイベントを打つよりよほど効果があると、筆者はひそかに確信しています
この記事を書いた人
NPO法人南房総リパブリック理事長
1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。