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快適な住まいと地域を同時につくりだす

予算20万円! 古民家をDIYでエコリノベしたら見えてきた「リノベーション田舎づくり」の可能性(3/5ページ)

馬場未織馬場未織

2017/02/16

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エコリノベ×南房総 ~快適な地域を個々の住まいからつくっていく~


写真提供:豊口信行さん

エコリノベとは、言葉をそのまま開くと「エコロジカルなリノベーション」となります。

断熱性・気密性など住まいの環境性能を高めて快適さを獲得すること、それに伴って暖房費が削減、CO2排出量も大幅に削減されることが期待できるリノベーションのことで、体感・コスト・環境すべてにプラスを生む動きがつくれるとも言えます。

さらに再生可能エネルギー利用や地域資源の有効活用も抱き合わせで進めていけば、快適な地域をつくる動きにもつながっていきます。

前述の『南房総DIYエコリノベワークショップ』では、築120年の民家に対してエコリノベを行なったわけですが、「古くて寒い家」が見た目はそのままに「古いけれど暖かい家」に変わっていく体感は忘れがたいものになりました。

畳をはがして気密シートを張り、さらに薄いスタイロフォーム(発泡スチロール系の断熱材の一種)を張り、畳を戻すと、足元がじんじん冷えてくる感覚がふっと途切れます。これが家の居心地を悪くしていたのか、と瞬時に気づくほど。

障子面にはポリカーボネート(CDの材質にも使われるポリエステルの一種。強度は金属並みで耐衝撃性が大きい)をはめて、そこに桟木を取り付けて障子を張ることで空気層をつくれば、縁側と室内を障子紙1枚で仕切っていた状態とは比べ物にならないほど断熱性能が高まります。また、天井懐には厚さ100mmの断熱材を敷きこみ、上昇気流で暖かい空気が逃げていくのをきっちり防ぎます。

すべてを終えた後、障子を閉めて小さな石油ストーブをつけると、徐々に部屋のなかが暖まりはじめました。

それまでは、ストーブ周辺にいないと暖かさを確保することができなかったのに、わずか10分程度でフワッと体が温まる程度まで室温が上昇。何より、肌に触れている床面が冷たくないことで体感温度がぐんと上がりました。

つまり

体感温度=(室温+放射温度)÷2

ということ。

放射温度とは物体の表面の温度ですから、これが冷たければいくら空気が暖かくても体感温度は低くなる。逆に、空気が冷たくても陽だまりで床が暖まっていると体感温度は高くなります。

体感と理屈が合致すると、「暖かさを得るためには何をすればいいか」が見えてきますよね。

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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