予算20万円! 古民家をDIYでエコリノベしたら見えてきた「リノベーション田舎づくり」の可能性(2/5ページ)
馬場未織
2017/02/16
全国から延べ100人が参加した『南房総DIYエコリノベワークショップ』
先日、筆者の運営するNPOでは『南房総DIYエコリノベワークショップ』という4日間のイベントを開催しました。隙間風だらけの寒い民家をみんなで断熱改修するというプログラムで、全国から延べ100人超が参加しました。
参加者は、「南房総」「DIY」「エコリノベ」というキーワードのいずれかに惹かれて応募したわけですが、このワークショップは単なる4日間のイベントにとどまらず、「リノベーション田舎づくり」のきっかけを大いに孕(はら)んでいました。
というのも、ワークショップの縁がその後、各地域で自然に、勝手に育ち、何とも楽しげな輪が広がり続けている次第。その縁は「コミュニティ」などという概念におさめたくないようなパワーがあるものなのです。
そこで 「南房総」「DIY」「エコリノベ」というキーワードを軸に、それぞれの掛け合わせがどんな効果を持つか考えてみましょう。
DIY×南房総 ~地域に住まいを“持つ”だけではなく“つくっていく”~
「田舎暮らしをしたい」と思う方がイメージするような古い民家は、修繕箇所がたくさんあります。また、実際に暮らし始めてみると、風情はそのままに現代の暮らしに合った空間にリノベーションしていきたいと思うところも出てきます。
そんな時、「古い家だしなあ、もうちょっとガマンするか」という思いと、「出費が痛いけど見積りとってみるか」という思いの間で悶々とするだけでなく、カンタンな修繕やちょっとした家具づくりなどを自身で手掛けられるようになると、家に対する感じ方がまったく変わってきます。
幸い、古い民家などを賃貸した場合、賃貸マンションなどと違って「壁に穴を開けるな」といったルールはまあほとんどなく、「ボロいかわりに自由にしていいよ」と言われることが多いので、田舎はDIY天国だと言えますね。
DIYのよいところは、空間のできばえだけが価値ではない、というところです。
クオリティは、自分の力量次第。業者に発注したものだと細かい瑕疵が気になるのに、なぜかDIYの空間では失敗も想い出になります。自らチャレンジを許しつつ未来をつくる実験場として、大いに遊ぶことができるわけです。
また、ひとりではなかなか進まない作業もみんなですれば楽しいものとなり、共につくる仲間を募るきっかけとなり得ます。さらに、DIYのスキルアップにより自分でできることが増えて、「お金がなくてもけっこう生きていけたりして…」と生活に自信もついてきます。
さらに、屋外に広い作業スペースがとれる田舎は最高の環境です。金槌やインパクトの音などで近隣に恐縮するほど密集していないため、のびのびと作業できます。むしろ、「何をやってます?」とのぞく隣人と会話が生まれたり、「お宅もやってあげましょうか?」「一緒にやりましょうよ」と交流が生まれることも。
作業を介したコミュニケーションは、実に楽しいものです。
わたしの暮らす南房総には「DIYマフィア」と呼ばれる素敵な集団がいます。知り合いの家を直してまわる腕利きの素人たちで、夜になると直しかけの家で楽しい宴会をし、終わると次に困っている人の家に行きます。きっと彼らは、ただ飲むだけではもう飽き足らないかもしれません。笑。
この記事を書いた人
NPO法人南房総リパブリック理事長
1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。