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週末は田舎暮らし! を始めよう(18)

田舎暮らしを難航させる”農地”という落とし穴(3/3ページ)

馬場未織馬場未織

2016/06/10

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農地の未来を考える

農地は「耕作の目的に供される土地」だからこそ、固定資産税が低く設定されています。農地から得られる収入(野菜や米をつくって売るなど)は、たとえば都心の住宅地の土地の収益性と比べると驚くほど低く、したって税金も安い。

だからといって、農地として利用しない人が固定資産税の安さに目をつけてカンタンに農地を購入することなどできないように、農地法でさまざまな規制をしています。

しかし巷では、農地を購入して産業廃棄物などを投棄する場所にしてしまう業者もあるそう。こうした動きがある以上、農地法は緩和されないどころか、より厳しく運用されることになるのは、当然のことかもしれません。

ただ、一方で、「農地法が農地利用をがんじがらめにしている」という部分も、多分にあるのではないかと感じています。耕作放棄地が増え続けているという現状があるわけですから、農地法を部分的に緩和することで、農地をいままで以上に有効活用できるよう可能性を押し広げていく、という方向も模索する価値があると思います。

たとえば、畑のわきにちょっとした休憩小屋を建てられたらな、なんてアイディアがあったとしても、現行の法律では農地でそのようなことはできません。そんなことを許していったら農地が宅地に変わってしまう! というリスクがありますから。


 
でも、「ごく小さな小屋+農地」という小規模な農的生活の普及は、農地活用を促進させると思うんですよね。政府は、耕作放棄地に対しては課税強化する、という手段で農地活用を促進させることを狙っているようですが、農の現場から見ると、それは抜本的な課題解決にはならないのではないかと思えます。

次世代の人たちにとっての「農地」の価値を高める方向に、考えていきたいのですが。


…おっと。つい熱が入ってしまいました。最後に話を戻します。

わたしたちの土地売買のケースは、売主さんの「土地をいっぺんに全部売りたい」という希望があったこともあり、本登記を目指していました。でもそれだけが解ではありません。宅地だけは購入して畑部分は売主さんから借りる、といった柔軟な形も、合意さえあれば可能なはずですし、農地転用(*)という策もあります。もし、あなたの気に入った土地に「農地」というワードがあったとしても、ひるまずに最善の道を検討してみてください。

(ちなみに田舎物件には「農地」だけでなく、いろいろな要注意ワードがあります! その話も、また今度。)


(*)農地転用:農地に区画形質の変更を加えて住宅地や工業用地、道路、店舗などの用地に転換すること。 区画形質に変更を加えなくても、農地以外の状態にする行為も農地転用となる。 また、一時的に資材置き場や、駐車場などにする場合もそれとなる。

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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