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週末は田舎暮らし! を始めよう(18)

田舎暮らしを難航させる”農地”という落とし穴(2/3ページ)

馬場未織馬場未織

2016/06/10

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「農地」を取得する道のりは長い

一般的には、「農地は、農家同士でなければ売買できない」ということは、多くの方がご存知かと思います。

ではなぜ、わたしたちが農地の含まれた土地を購入できたかというと、実は、さる関係者に巨額の裏金を渡したからです…。

となると多少ドラマチックなのですが、実際は、地道に努力して「農家」の資格を取ったからです。

ん? 農家って、資格があるの?

と思われる方がいるかもしれません。
もちろんあります。農家資格を取得しないと、農家になれません。

基本的には、農地を5反=1500坪以上所有していて、その農地を管理する能力があると認められた者が、農家となれるのです(ここでいう農家とは、農業で食べているかどうか、という話とはちょっと違うと思ってくださいね)。

わたしたちの場合は、土地を取得した時点では、むろん農家ではありませんでしたので、農地部分に関しては仮登記しかできませんでした。でも、農地部分が1500坪以上はありましたので、「農家資格を取得する資格」は持っていたのです。ややこしいですけどね。

ということで、わたしたちの選ぶべき道は大きくふたつありました。

ひとつは、農地の取得は諦めて、仮登記のまま暮らすという道。もうひとつは、農家資格を取得して、農家になり、農地を本登記するという道。

わたしたちは、売り主さんの意向もあり、また将来の計画もありましたので、農家になって農地も取得しよう! と思いを定めたという次第。

まずは南房総市の農業委員会に「営農計画書」を提出し、その内容に沿って当該農地を耕作可能な状態=耕作放棄していない状態=少なくとも草ぼうぼうにはしていない状態に保ち続ける、という実績をつくるために頑張りました。草刈りや畑づくりについて手ほどきを受け、知り合いにもずいぶん手伝ってもらいました。

1年目の段階では「まだダメ」と許可が見送られて、がっくり。農業委員さんが折りにふれて視察に来るのですが、耕作状況もさることながら、東京から週末だけやってくる意味不明な家族を信頼するのはむずかしかったんだと思います。まあ、思うようにホイホイと事は進まないよねえ、とため息をつきつつ、気を取り直してまた頑張り、2年目にようやく許可が下りることに。

これはうれしかったですね。なにかの試験に合格したような気分でした。

わたしの名前は「農地基本台帳(農家台帳)」に登録され、農地の売買ができる分際となり、農地部分についても本登記にこぎつけました。

わたしとしてみれば、仮登記時に売り主さんにいつ「やっぱり売るのはやめる」と言われるかもしれないという不安定な状況は落ち着きませんでしたが、いま思えば売り主さんも「いつまでも仮登記のままでいられたら、農地に対する責任が残ってしまって嫌だなあ」と思っていたはず。

ですので、本登記の手続きの際、売り主さんとガッシリ握手して喜び合ったのを覚えています。

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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