デジタル化が進むほど、リアルな人と人とのつながりが重要になる(4/6ページ)
ウチコミ!タイムズ編集部
2020/09/30
経営方針は入居者目線を重視
——山田オーナーの賃貸経営は、内見にはオーナー自ら立ち会い、入居者の望むリフォームができるという入居者目線の経営ですね。
内見は仲介会社の営業マンに任せているだけだと、入居希望者さんとのやりとりはできませんからね。よく仲介会社に家賃の交渉をされることもありますが、こういった場合も自分が立ち会っているかいないかで、答えは変わります。
——どういうことでしょうか。
たとえば、営業マンが「今日、内見にいらしたお客様、とてもいい方でしたし、お部屋もすごく気に入ってくれましたよ。ただ、お家賃だけなんとかなれば、決めていただけるのですが……」というような相談をされることがあります。しかし、それだけでは、どんなふうにいい方だったのか、部屋のどこを気に入ってくれたのか、そして、どうして家賃を下げてほしいのか、よく分かりません。もし、入居希望者さんに直接お会いできれば、人となりをある程度把握できます。現在の仕事の状況や今後の見通しなどをしっかり話せる人であれば、条件を見直す判断材料になるのです。
——とくに現在は、新型コロナの影響によって一時的に収入が減ってしまい、しばらくの期間だけなんとかしてほしいという方も多いかもしれません。
実際に以前、事情があって収入の審査には明らかに通らない入居希望者さんがいました。しかし、その方がこれからどうやって仕事をしていくか、どのような人脈があるかなどを明確に話してくれ、私は入居してもらうことに決めました。その後、家賃の滞納や未払いなどは一切ありません。
加速する不動産DX 異業種の参入も
——コロナの影響もあり、不動産業界のDXが急速に進んでいくのではないかと思います。山田オーナーは、意識していることや感じていることはありますか。
賃貸経営においては、やはり募集の部分は大きく変わってきたと思います。このコロナ禍でも部屋を探さなければならない人、引っ越しをしなければならない人はいます。そういった人たちが、部屋を直接見に行けないケースもあるんですよね。パソコンやスマートフォンの画面で部屋の写真は見られても、もう少し実際の感覚を知りたい。そんなときに、営業マンがカメラを持って部屋に行き、リモートで部屋の様子を案内するといったことが簡単にできるようになってきました。この数年で徐々に進んでいたデジタル化が、コロナ禍によって一気に花開いたという感じがしています。
リモートで内見することに関しては、AR※やVR※を活用して、入居希望者さんがご自宅や仲介会社にいながらにしていろいろなお部屋を見られるという方法が進んでいくのではないかと思います。ウチコミ!さんなら、内見の疑似体験のようなことをいち早くやってくれるのではないかと期待しています。
このデジタル化に加えて、異業種から不動産業界に参入してくるケースもこれから増えていくと思います。
※AR(Augmented Reality):人が知覚する現実環境をコンピュータにより拡張する技術、およびコンピュータにより拡張された現実環境そのものを指す言葉
※ VR(Virtual Reality):コンピュータによって作り出された世界である人工環境・サイバースペースを現実として知覚させる技術
——異業種の参入、どういったことでしょうか。
リモートで内見できること自体も、IT業界が大きくかかわっています。ひと昔前までは、IT業界の人が不動産業界に入り込んでくるとは考えていませんでした。しかし、宅地建物取引士の資格を取得すれば、ITの技術を持った会社が不動産業界に入ってくることは簡単です。
ほかにも、自動車業界、音楽業界など、どんな業界でも参入してくることになるのではないでしょうか。そうなると、不動産業者が気づかなかった点での問題解決も進んでいくと思います。
——たとえば、どんなことが考えられそうですか。
すでにネット回線が導入された物件はありますが、スマートスピーカーをあらかじめ設置しておくこともできるかもしれません。「7時に目覚ましをかけて」というだけで、時間になったら入居者の好みに合った音楽が流れるといったこともいいですね。
このように異業種が不動産業界に参入してくることで、さまざまな経営のやり方が可能になると思います。これからは、「それって必要?」と思われるようなことも付加価値となり、それが当たり前になっていくのではないでしょうか。
——オーナー側も柔軟に対応していく必要がありそうですね。
そうですね。不動産会社、管理会社、オーナーが、時代の変化を見据え、しっかりとアンテナを張り、賃貸経営とは一見関係がないように思われることに関しても、興味を持つ必要があると思います。私自身も、新聞やテレビなどから得た情報を日々、まとめるように心掛けています。
こういった情報収集ができなければ、賃貸経営の未来は暗いものになっていくかもしれません。単純に「家賃を下げれば、空室は埋まるよね」という発想では、明治時代に帯刀して武士だと言い続けている人のように、数年後には時代遅れのオーナーになってしまっているのではないでしょうか。
山田オーナーのマイノート
この記事を書いた人
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