住宅に欠陥があっても日本の建築裁判は消費者を守ってくれない(2/3ページ)
岩山健一
2016/09/23
なぜ建築裁判は機能しないのか
無能な裁判官に無能な建築士が助言する--、そんな構図がなぜ生まれてしまうのでしょうか。
無能な建築士は間違ったことを言って業界から反発を受けたくないと考えます。それは裁判官も同じで、企業や経済界からの反発はありがたくないわけです。まして自分の出世に影響するとなればなおさらでしょう。
そうであれば、リスクを冒して企業(被告)の瑕疵を糾すよりも、消費者(原告)を黙らせることを考えたほうが得策です。原告に対して、本来は必要の無い「さらなる立証」を要求し、業界(被告)に有利な判断を示せば、少なくとも業界からは反発が出ることはありません。これが現代における建築裁判の実態なのです。
そういえば昨年、私が支援していた原告と、ある大手鉄骨系ハウスメーカーとの和解が成立したとき、この裁判官はいつものしかめ面を、満面の笑みに変えて喜びを表明していました。
しかし、この裁判で和解が成立したのは、たまたま相手の弁護士がモラルの高い人物であったというだけのこと。だから被害者に対するきちんとした賠償補填が認められたのであって、無能な裁判官は何もしていないのです。私は心底、「お前の手柄じゃないよ、こちらの立証だよ」と言いたくなりました。
この記事を書いた人
株式会社日本建築検査研究所 代表取締役
一級建築士 建築ジャーナリスト 大学で建築を学び、NHKの美術職を経て建築業界へ。建築業界のしがらみや慣習に疑問を感じ、建築検査によって欠陥住宅を洗い出すことに取り組む。1999年に創業し、事業をスタート。00年に法人化、株式会社日本建築検査研究所を設立。 消費者側の代弁者として現在まで2000件を超える紛争解決に携わっている。テレビ各社報道番組や特別番組、ラジオ等にも出演。新聞、雑誌での執筆活動も行なう。 著書にロングセラー『欠陥住宅をつかまない155の知恵』『欠陥住宅に負けない本』『偽装建築国家』などがある。