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建築検査インスペクターの実態を暴く

建築業者が宣伝する「第三者機関の検査」を信用してはいけない!(3/3ページ)

岩山健一岩山健一

2016/08/26

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なぜインスペクターが必要なのか

1990年には170万戸を超えた日本の住宅着工戸数は、大きく減少し、現在では100万戸を下回っています。今後も人口減少に加えて、世帯数は2019年をピークに減少していくと予測されています。それを受けて国土交通省、経済産業省は中古住宅の流通を促進していくことを政策として掲げているのはご存知の通りです。

新築市場が縮小するなかで、国としては中古住宅の売買市場を形成しようと目論んでいるのですが、課題もあります。中古住宅は、どのような業者がどのように施工したのかはっきりしない場合が多く、また仮に欠陥が見つかった場合でも、建設した業者に対して責任追及が法的にむずかしくなることなどから、売買の取引において住生活者が一方的に不利な状況に追い込まれることが予測されるのです。

民主党が政権を取ったときのマニュフェストには、住宅の性能や瑕疵の有無を正しく鑑定できる人(インスペクター)を育成する、という項目があげられていました。これは、中古住宅の取引過程においては、インスペクターが介在することが理想的であるという考えに基づくものと思われます。

2002年から施行された中古住宅の性能表示制度について、国土交通省は「この制度は瑕疵を指摘するためのものではない」と明言しています。つまり、この制度が国民(住生活者)のほうを向いているものではないことは明らかです。だからこそ、住宅の性能や瑕疵の有無を正しく鑑定できるインスペクターを育成していくことが望まれるのです。

検査機関を見きわめるポイント

しかし、現実はというと、建築検査や診断を行なうという会社はインターネット上では増えてきているのですが、本当に消費者の権利を守るというイデオロギーを掲げている検査機関は、ほとんど存在していません。

よって住生活者の方々が建築検査のサービスを利用したいと考えたときには、自らの目で検査機関を見きわめなければなりません。そのときに注目すべきポイントを下記にあげておきますので、ぜひ参考になさってください。

(1)紛争に発展する確率が高い
(2)補修工事に発展する確率が高い
(3)建設業界からの嫌われ度合が大きい
(4)検査の際に機械や道具を多用する
(5)検査官の間で検査システムや見解が共有されている
(6)業界の下請けではなく、消費者からの依頼だけで経営が成立している
(7)過去の検査実績、検査事例を教えてくれる

これらのポイントを確認して、厳正に検査機関を選ぶことが重要です。有名な会社だから、インターネットの検索結果で上位に表示されたから、といった理由で選ぶことは決しておすすめできません。

有名であっても意外と役に立たない検査機関は多いものなのです。

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この記事を書いた人

株式会社日本建築検査研究所 代表取締役

一級建築士 建築ジャーナリスト 大学で建築を学び、NHKの美術職を経て建築業界へ。建築業界のしがらみや慣習に疑問を感じ、建築検査によって欠陥住宅を洗い出すことに取り組む。1999年に創業し、事業をスタート。00年に法人化、株式会社日本建築検査研究所を設立。 消費者側の代弁者として現在まで2000件を超える紛争解決に携わっている。テレビ各社報道番組や特別番組、ラジオ等にも出演。新聞、雑誌での執筆活動も行なう。 著書にロングセラー『欠陥住宅をつかまない155の知恵』『欠陥住宅に負けない本』『偽装建築国家』などがある。

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