建築業者が宣伝する「第三者機関の検査」を信用してはいけない!(2/3ページ)
岩山健一
2016/08/26
「消費者のための機関」にも問題がある
かくいう私はといえば、宣伝のようになってしまいますが、当然、「消費者のための機関」を自認しています。「消費者のための機関」であるための条件のひとつとして「消費者からの依頼に軸足を置いている会社であること」があげられますが、実はそうした機関のなかにも隠れ業界派が潜んでいるので注意が必要です。
またインターネットなどによるマーケティングに長けた無資格者が、仕事のない建築士たちをネットワークして、見せかけの組織を形成しているところも多く存在しています。
さらに、なかには「消費者のための機関」であっても、その能力の低さを建設業界側が悪用し、形だけの検査で「問題ない」と言わせて、コトを納めるといった事案も実際には数多く存在しているのです。
つまり、消費者に軸足を置いているという検査会社も、建設業界に手玉に取られているところが多いというのが実態と考えたほうがいいでしょう。実に情けない現実ですが、考えてみれば、建設業界としては“適度な知名度”があって、“建築検査の能力が低い”検査会社が最も利用価値が高いのです。
検査機関にとっては検査能力が何よりも大事
本来の建築検査という仕事は、確認できた事実を示し、業界に対して堂々と対峙することができることはもちろん、何よりも重要なのは建築検査の能力、つまり核心を見出す力を持っていることに尽きます。
私の会社の場合でいえば、10件検査をすれば、うち3件が紛争になるというのが平均的な結果といえます。
では、紛争にならなかった7件は、何も問題がなかったかといえばそうではありません。それらのケースは、業者側が非を認めた上で、金銭解決したり、補修工事に入ったりするケースです。つまり、検査をすれば必ず大なり小なり何か問題が見出されるということなのです。
この記事を書いた人
株式会社日本建築検査研究所 代表取締役
一級建築士 建築ジャーナリスト 大学で建築を学び、NHKの美術職を経て建築業界へ。建築業界のしがらみや慣習に疑問を感じ、建築検査によって欠陥住宅を洗い出すことに取り組む。1999年に創業し、事業をスタート。00年に法人化、株式会社日本建築検査研究所を設立。 消費者側の代弁者として現在まで2000件を超える紛争解決に携わっている。テレビ各社報道番組や特別番組、ラジオ等にも出演。新聞、雑誌での執筆活動も行なう。 著書にロングセラー『欠陥住宅をつかまない155の知恵』『欠陥住宅に負けない本』『偽装建築国家』などがある。