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業界の悪しきカルチャーを暴く(5)

不動産会社の「不安につけこむセールストーク」にご用心(1/2ページ)

大友健右大友健右

2016/03/21

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圧倒的な「情報格差」は何をもたらすのか

不動産業界内では、「不動産公正取引協議会」という機関が全国各地に設けられていて、「公正な競争」や「統一的かつ効率的な運用」を目指して活動しています。また、「眺望は最高」とか、「日当たり良好」、「激安物件」、「地域の人気ナンバーワン」といったワードは広告で使えないことになっています。

そうした活動や規制がまったくの無駄だというつもりはありませんが、残念ながら業界のカルチャーを変えるまでには至っていないのが現実です。今回は、そうした活動や規制では解決し得ない、不動産業界の圧倒的な「情報格差」がもたらす不幸についてお話したいと思います。

人は、調子のいい売り文句に対しては警戒心を持つものです。うまい話には裏があるといいますが、「本当にそんなにいい話があるの?」という疑問が頭を持ち上げるのでしょう。

しかし、不動産のことになると話が違ってきます。業者と消費者の情報格差があまりに大きく、一般の人は自分なりの判断基準を持つことさえできない状態であるため、たとえ不審に思っても結果として業者の思い通りに誘導されてしまうケースが多々あるのです。

人は「わからないこと」に不安を感じる

たとえば家電であれば、家電量販店の店員が、「こんなにお得な商品はありません。買わなければ損しますよ!」と言ったとしても、スマホで価格を検索したり、商品の口コミを調べたりすれば、その店員の言葉が本当かどうかすぐにわかってしまいます。

しかし、不動産ではそれができないのです。営業マンに「このクラスの物件がこの値段で出ることはありません!」「いま決めなければ、ほかの人に取られてしまいますよ」と言われても、その言葉をどこまで信じていいものか、判断する材料が圧倒的に不足しているのです。

不動産会社のほうもそれを十分に理解していて、わざと限られた情報しか出さず、お客さんの「不安」や「損したくない」という気持ちを煽って、その心理を誘導しようとします。しかも、優秀な営業マンであればあるほど、その術に長けているのです。

人は「わからないこと」に不安を感じる生き物です。そのため、一見、自分のためにいろいろよくしてくれる営業マン、しかも不動産のプロである営業マンの言葉を信じてしまいたい、信じて「安心したい」という心理が働くのでしょう。

実は、住宅を衝動買いしてしまう人が意外と多いのも、そういった心理をうまく誘導されている結果かもしれません。

たとえ営業マンに誘導されたとしても、それがお客さんの幸せ、メリットにつながる結果であればいいのですが、実際はどうなのでしょうか? 自社の利益を何がなんでも最優先するという不動産業界の悪しきカルチャーを考えてみれば、答えは自ずと見えてくるはずです。

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この記事を書いた人

株式会社ウチコミ 代表取締役 株式会社総研ホールディングス 代表取締役 株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役 1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち、大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。 現在、株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役として、住宅リフォームを中心に事業を展開。また、株式会社ウチコミ 代表取締役として、賃貸情報サイト「ウチコミ!」を運営。入居の際の初期費用を削減できることから消費者の支持を集める。テレビ・新聞・雑誌などメディア出演も多数。

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