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家づくりの設計・見積もり時の注意点(1/11)

着工までのスケジュールと設計前にやっておくこと

山田章人山田章人

2016/01/28

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家の設計前にしておくこと

 工事が始まってしまうと、多くの部分は業者任せになってしまうため、建て主のできることはほとんどありません。ということは、その前にどれだけじっくり考えて家づくりの準備ができるかに、家づくりが成功するか否かがかかっているわけです。

 ざっくりいうと、建て主が設計までにすることは「情報収集」「資金計画」「土地探し」「業者選び」「家のイメージの検討」です。このなかで「土地探し」には土地の購入も含まれるので、設計前に大きなお金が動く可能性もあります。

家族会議で家のイメージを決める

「土地探し」「業者選び」については別項で紹介したのでここでは省いて、「家のイメージを検討」を中心に進めていきます。

 まず、家族がどのような家を理想としているのか、新しい家に住む全員から要望を吸い上げます。そしてリスト化し、「絶対に必要なもの」「できれば必要なもの」「なくてもいいもの」など優先順位をつけて設計の参考にします。おそらく、いまの家に対する不満もあるはずなので、それらも同時にまとめて次の家に持ち越さないようにします。

 そのなかで、現実的ではない要望も出てくることがあります。たとえば「庭を大きくしたいので、家を小さくしたい」など、将来的に見ても優先すべきことではないと思われるものは要望から外していきます。

 このように客観的に要望を見ることで、本当に優先すべきものが見えてくるはずです。

 また、実際に設計が始まると予算と時間に追われるようになり、理想のイメージを持てなくなってきてしまいます。設計の前にしっかりとしたイメージをもっておくことはもちろん、要望の優先順位ができていると、本当にかなえたい理想の住まいを予算に合わせて実現しやすくなります。

大切なのは「家族にとって快適かどうか」

 一口に「いい家」といっても、人それぞれだと思います。広い家、日当たりがいい家、災害に強い家、エコな家…、確かにそれらの要素が含まれているのに越したことはありませんが、いちばん大切なのは「家族にとって快適かどうか」です。

 家族は年を経るごとにどんどん変化していきます。子どもが大きくなり、自分もシニアライフに向けて歩んでいくことになります。5年後、10年後、20年後、家族がどのようなライフスタイルを送っているかを考えながらプランを練ることが大切なのです。

工事の着工までのスケジュール

 それでは、工事の着工までの手順を紹介しましょう。

(1)ハウスメーカーや工務店など、設計と施工が同じ業者の場合
 まず、業者との最初の打ち合わせでは、営業マンや設計担当者と現在のライフスタイル、新しい家の外観・内観のイメージ、家族の将来設計などを共有してイメージを固めていきます。

 次に、間取りなど家族の要望をより具体的に図面に落としていきます。そして各階の平面図を完成させ、おおよその見積もり額が提示されるので、検討・修正を重ねていきます。そして、最終的に納得する形に落ち着いた段階で間取りを確定し、立面図を作成してもらいます。この立面図では、外観のデザインや窓の位置・大きさ、天井の高さなどを4方向から確認できます。

 それから、各設備の仕様を決めていきます。外壁・屋根の色や素材、各部屋のドア・クロス、水回りのグレードなどを決めて最終確認をし、問題がなければ着工となります。

 着工後は、予定されたスケジュールに沿って現場は動いていくので、要望・質問などは現場の責任者(棟梁や監理者)とのやり取りで解決していきます。工事が始まってから、建て主としてやることはなくなってしまいますが、できる限り現場に足を運ぶことをおすすめします。建て主が見学に来るということは、家への期待が大きいと現場の職人たちも感じるはずですので、緊張感と張り合いを持って作業をしてくれます。このような心遣いが、家づくりの成功につながるのです。

(2)建築家など設計と施工を分離した場合
 大体の流れはハウスメーカーや工務店と同じですが、違うポイントもあります。

 まず設計の期間です。ハウスメーカーや工務店は規格品のパーツの組合せで建てますので、設計期間が早いです。打ち合わせのペースにもよりますが、1~3カ月で終わります。

 これに対して、設計事務所の場合、要望に合わせてゼロから設計していきますので、平均して4~5カ月、建築家にもよりますが建て主と一緒につくるという意識が強いので、材料の吟味やプランの打ち合わせを重ねて1年くらいかける人もいます。

 あらかじめ設計期間を打ち合わせしておくことも重要です。

 また、設計図ができあがってから工務店に見積もりを出します。通常は、2、3社に見積もり依頼しますが、工務店も初めて見る細かい図面を隅々まで読んで拾い出して算出しますので、最低2週間はかかります。

 そこから予算に合わせて最終調整しますので、図面説明(設計の完了)から着工まで早くても1カ月はかかります。

 着工後は、建築家が監理者として建物の性能監理を建て主の代行として行ないます。第3者の目で現場を見ますので、設計と施工を分離する利点でもあります。

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この記事を書いた人

一級建築士

5人建築家コンペでの家づくり 家escort京都 代表。 省エネ住宅診断士。 一級建築士事務所にて、神社仏閣から商業建築、住宅まで幅広く設計監理業務に従事した後、独立。2005年より、それまでの経験から、いい建物づくりには住まい手と設計者、施工者の相性のよい結びつきが不可欠と考え、住生活エージェントに専念。 住まい手が、自ら相性の良い建築家と施工者を選び出すのは至難の業であるという考えのもと、住まい手目線を基準に最適な建築家と施工者を結びつける代理人を目指す。自らの立場を、販売代理店ではなく、購入代理店と位置づけている。住まい手にとって最適な住宅とは何かを考え、老後までを考えた資金計画、不動産業者とは違う目線での土地探し、まだ施主様すら気づいていない好みや個性を引き出し最適な空間を生み出す工夫など、家づくりの準備を充実させることによって、結果、生涯心地のよい住まいを手に入れていただくことをミッションとして活動している。

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