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新築マンション購入の基礎知識(1/5)

新築マンション購入時の資金計画の考え方

秋津智幸秋津智幸

2016/02/02

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購入資金の上限はいくら?

 新築に限らずマンションを購入する際に、最初に検討しておきたいのは、マンション購入資金の上限をいくらまでとするかです。

 人生の最大の買い物ともいえる住宅購入なので、できるだけ自分の理想通りの物件を手に入れたいところですが、理想の物件に出会えたとしても、資金計画に無理があると、結局は物件を手放さなければならなくなる可能性もあります。

 自分たちの収入や預金から、今まで通りの生活を行なえるような無理のない資金計画を立て、その範囲内での理想の物件を購入することが重要です。

資金計画を考える3つのポイント

 無理のない資金計画を立てるためには、「融資の借入額」「返済比率(月々の返済額)」「手元に残す資金」の3つのポイントで考えていきます。

 まずひとつ目のポイントは、「融資の借入額」では、自分の収入から現実的に借りられる額はいくらなのかを検討することです。マンションを購入した場合、かかる費用は物件価格だけではありません。住宅ローンの借り入れにかかる費用や物件取得にかかる税金、登記費用などの取得時の諸経費、引っ越し費用、新しい家具などの新生活に必要な費用など、さまざまなお金が必要になります。

 物件価格以外の費用をすべて合わせると物件価格の5~10パーセント程度になるといわれています。たとえば5000万円の物件であれば、物件価格以外に250万円~500万円が必要になります。

 住宅を購入する場合、物件価格とその他の費用をすべて自己資金でまかなうのはむずかしいため、住宅ローンを利用することになりますが、一般的に住宅ローンの借入額は年収の5倍以内にすべきだといわれています。

 民間の住宅ローンでは年収の6倍程度を上限とする場合が多いですが、借りすぎてしまうと返済が大変になり、生活に支障をきたしてしまいます。また、定年以後に返済するのは大変なので、定年である65歳までを返済期間の上限にしておくことも大事です。

 では、現在の自分の収入から、いくらが借り入れできる限度額なのかを考えていきましょう。たとえば、年収の5倍以内とする考え方からは、年収500万円であれば、2500万円以内が妥当だといえます。

「返済比率(月々の返済額)」から考える

 しかし、実際はふたつ目のポイントである「返済比率(月々の返済額)」をベースに考える方が現実的です。基本は、物件取得後の生活から考えていくことです。

 マンションの場合、毎月の住宅ローンの返済に加え、住居費として管理費や修繕積立金、固定資産税や都市計画税などのランニングコストも必要になります。そのほかにも、光熱費や食費、保険料、子どもがいる場合は教育費や医療費などの生活費もあります。住宅ローンの返済だけを考えて資金計画を立ててしまうと、厳しい返済生活となってしまいます。

 返済比率については、一般的には年収の25パーセント以内が安心できる水準だといわれていますが、収入次第では、それでも家計が厳しくなる場合があります。

 たとえば、年収500万円の場合、税金や社会保険料を除く、手取り収入では大体年収350万円になります。そこから住宅ローンに年間125万円かかり、さらに管理費や修繕積立金、税金が年間35万円ほどとすると、残りは年間190万円程度になってしまいます。

 これを月で計算すると、残り15.8万円で生活することになります。この水準では貯蓄に回せるお金が少なくなり、安心できるとはいいがたい水準でしょう。また、2017年4月には消費税10パーセントへの引き上げが実施される予定があります。家計に与えるダメージも大きいので、計算に入れておく必要があります。

 住宅を買うことで生活が苦しくなってしまっては、本末転倒です。そうならないために、家庭の収入と支出から購入後の家計をシミュレーションして、無理のない資金計画を立てることをおすすめします。

 シミュレーションのやり方としては、まず、今現在の手取り収入から毎月いくら住居費(ローンの返済、管理費、修繕積立金、税金を合わせた月額)として支払えるかを、その他の生活費から逆算します。小さい子どものいる世帯では、将来の子供の養育費もその他の生活費に加えておく必要があります。その住居費を元に年間で確実に返済できる金額を算出し、住宅ローンはその範囲内で借りられる金額にしておくべきでしょう。

「手元に残す資金」はいくら必要か

 3つ目のポイントは、「手元に残す資金」です。具体的には、住宅購入直後の預貯金等の金融資産になりますが、購入直後であっても貯金や金融資産が底をついているということは避けたいです。

 住宅購入後、不測の事態があった場合も考慮してある程度の生活資金は残しておく必要があります。目安としては、最低でも手取り半年分の生活費は確保するようにしましょう。

 これら3つのポイントをしっかり考えて、資金計画を立てれば、無理のない返済が行なえるでしょう。

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この記事を書いた人

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント

公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、AFP、ファイナンシャルプランニング技能士2級。 神奈川県住宅供給公社にて、分譲マンション、一戸建・宅地分譲、高齢者住宅等の新規不動産販売部門に従事した後、同社賃貸部門にて賃貸物件の募集、管理業務に従事する。その後、不動産投資専門の仲介会社を経て、不動産コンサルタントとして独立。 現在は「不動産サポートオフィス」の代表コンサルタントとして、自宅の購入、不動産投資、住み替え、融資など多岐にわたる不動産に関する相談・コンサルティングを行なう。その他、不動産業者向けの研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム等の執筆にも取り組んでいる。 主な著書に、「貯蓄のチカラ~30歳からのおカネの教科書」(朝日新聞出版)、「失敗ゼロにする不動産投資でお金を増やす!」「賃貸生活A to Z」(アスペクト)がある。

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