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頭金ゼロで住宅を購入するのは危険!?

住宅購入時に自己資金はどれくらい必要なの?

秋津智幸秋津智幸

2016/01/04

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頭金は物件価格の何割が必要?

 住宅ローンを利用してマイホームを取得する場合、一定の自己資金を用意する必要があります。自己資金を使うのは頭金(購入代金の一部)と諸経費です。頭金は原則として物件価格の2割が必要だといわれています。

 最近では、物件価格の9~10割を融資してくれる金融機関が多くなっています。つまり、返済能力があれば頭金ゼロでも住宅ローンを組むことが可能なのです。しかし、借りられるからといって返済能力ぎりぎりまで借りることは、何か不測の事態が起きたときに危険、つまりローン返済ができなくなる可能性が高くなるのでおすすめできません。

 先ほど、頭金は物件価格の2割必要だといわれているとお話しましたが、以前は確かに金融機関がおおよそ物件価格の8割までしか、融資してくれなかったことに起因しています。

 ところが、昨今は諸経費まで込みで融資する金融機関まであります。しかし、実際、金融機関は一定の預貯金がないといくら100パーセント融資が可能な返済比率範囲内の年収であっても、100パーセントは貸してくれません。その意味では、物件価格の「3割」(物件価格の2割、諸経費相当で1割)を自己資金として用意したいところです。ただし、これも最低限、融資を利用するために必要な金額と考えるべきで、預貯金が多いほど、安心感は高くなります。

自己資金が少ない場合のデメリットは?

 基本的な考え方として、毎月の返済額は自分が無理なく返済できる範囲内であれば、100パーセントの融資を組んでも理論的には問題ありません。

 ただし、自己資金が少ない場合のデメリットは、「住宅ローンの金利が高くなる」「不良債権になる可能性がある」「100パーセントであっても自分が無理なく支払える返済額の範囲内では選べる物件の幅が狭くなる」、「何か不測の事態があったときに対処できない可能性が高まる」の4つです。

高い金利で借り入れることになる

 まず、金利についてです。前述したように物件価格の100パーセントを融資してくれる金融機関も増えてきましたが、物件価格に対して融資の割合が高くなると総じて金利が高い傾向にあります。

 頭金の額を抑えて住宅ローンを組むと、一定割合頭金を入れて借りるよりも不利なローン商品になるということです。結果的に、高い金利で多額の融資を受けることになるため、生活に与える影響も大きくなります。

「不良資産になる可能性がある」ということですが、頭金が少ないということは物件価格に対して借入額が大きいということですから、返済開始から早い時期にどうしても住宅を売却しなくてならなくなった時に、売却代金を返済にあててもローンが残ってしまう可能性が高くなります。

 住宅価格は、原則として購入後に値下がりするものです。特に新築マンションの場合は、本来の価格に開発業者の祖利益や販売コストが上乗せされているため、購入直後に1割から、極端な物件では2割程度価格がダウンします。

 頭金が少ない場合、すぐに売却することになると購入後のローン残高が物件価格を上回り、物件を手放したとしてもローンが残ってしまうケースが出てしまいます。マンションという資産を手に入れたはずが、資産価値よりローンの額のほうが高い不良資産となってしまう可能性があるというわけです。

 もちろん、物件を手放さなければ問題はないですが、収入が減ってローンの返済がむずかしくなったり、家庭の事情で引っ越しを余儀なくされたりというケースもあります。ローン返済額と物件価格の差額が払えない場合、金融機関によっては抵当権を外してくれないため、売却自体ができなくなる可能性もあります。最悪の場合自己破産を迫られることにもなります。

 ただし、頭金を入れていれば不良債権化を防げるものではありません。あくまで自分の返済能力の範囲内でローンを組むという大原則を外せば、頭金を入れていても不良債権化の可能性は出てきます。

物件選択の幅が狭まってしまう

 次に、物件の選択の幅が狭まるということですが、一定の自己資金がなければ、100パーセントのローンは組めませんし、頭金を入れることで金利が下がり、少し多めにローンを組んでも自分の返済能力の範囲で購入できる物件の幅が広がるということになります。

 あくまで自分の返済能力の範囲内であるという原則の中で考える場合、やはり頭金を入れたほうが、物件価格が少し高くても購入できるようになるので選択の幅が広がるということです。

 頭金以外では、各種税金や手数料などの諸費用が必要になります。諸費用は通常、現金で用意しておくことが基本です。これらは物件価格やローンの借り入れ額、新築中古などによって金額が異なりますが、新築マンションの場合は、ローンを前提すれば5パーセント前後を目安として考えておくとよいでしょう。また、引っ越し費用や新たに家具などを購入することを考えてやや余分に用意しておくと安心できます。

物件価格の3割は自己資金で用意しよう

 このように、住宅の購入にあたっては、物件価格の100パーセントをローンで借り入れする場合でも、諸経費を合わせて物件価格の3割は自己資金で用意しなければ、住宅は買えないと考えたほうがよく、できれば頭金を入れたほうが安全というわけです。

 なお、自己資金を貯蓄額とイコールで考えてしまうのは危険です。貯蓄すべてを住宅購入資金に使ってしまうと、その後の不測の事態に対応できないばかりか、生活に余裕がなくなってしまいます。少なくても、半年は生活できる分だけの資金は残して、自己資金にあてましょう。

 どうしても自分の資金だけでは足りない場合は、今は税制に優遇措置のある親からの援助をお願いしてみることを考えてみるのもひとつの手でしょう。

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この記事を書いた人

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント

公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、AFP、ファイナンシャルプランニング技能士2級。 神奈川県住宅供給公社にて、分譲マンション、一戸建・宅地分譲、高齢者住宅等の新規不動産販売部門に従事した後、同社賃貸部門にて賃貸物件の募集、管理業務に従事する。その後、不動産投資専門の仲介会社を経て、不動産コンサルタントとして独立。 現在は「不動産サポートオフィス」の代表コンサルタントとして、自宅の購入、不動産投資、住み替え、融資など多岐にわたる不動産に関する相談・コンサルティングを行なう。その他、不動産業者向けの研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム等の執筆にも取り組んでいる。 主な著書に、「貯蓄のチカラ~30歳からのおカネの教科書」(朝日新聞出版)、「失敗ゼロにする不動産投資でお金を増やす!」「賃貸生活A to Z」(アスペクト)がある。

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