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映画で俄然注目! 事故物件住みます芸人・松原タニシから賃貸住宅オーナーへの貴重なメッセージ(3/4ページ)

朝倉 継道朝倉 継道

2020/09/04

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本当に怖いのは、生きている人?

「事故物件でも、心霊スポットでも、そこに踏み込まずにいればただ周りから見ていて怖いだけ。踏み込めば、そこにあるものが本当に怖い本物なのか、ウソなのかが分かるんです」

こう話す松原さんが暮らしてきた10軒のうち、ある意味一番怖いと感じたのが4軒目の部屋だ。千葉県にある約6畳の1K。著書「恐い間取り」「恐い間取り2」にも記されているが、松原さんはこの物件には「実際、ほとんど住めませんでした」という。理由は不可解なほどの体調の悪化だった。

「部屋に足を踏み入れた初日から、体が動かなくなってしまいました」


ほとんど住むことができなかった4軒目(写真/本人提供)

実はこの部屋、薬の過剰摂取によって女性が亡くなった現場だった。女性を襲ったかもしれない、薬が切れたことによる重い倦怠感が、松原さんに乗り移ったのだろうか?

だが、もっと大きな問題は、物件の向かい側の家にあった。その家では、周囲を囲む柵という柵に、多数の防犯センサーを設置している。それに何かが少しでも反応すると、昼間であろうと夜中であろうと近所中にアラームが鳴り響く。しかも、わざわざ近づかなくとも、松原さんが自室のドアの外に立っただけでセンサーは敏感に反応する。

「もしや、亡くなった女性が薬を過剰摂取したのは、この音に悩まされ、眠れなくなったからなのかも」

そう疑われるほどの異様な状況だったそうだ。

 

つまりこの物件では、怖いのは心霊現象よりもむしろ人だ。向かいの住人という、生きている人間こそが怖いのだ。過剰なまでのアラームを設置し、この人が誰を敵とみなし、追い払おうとしているのかは分からない。意図が分からないだけに怖いのだ。

その点、松原さんも「やはり人は怖いです」という。事故物件に住んで、たとえ不可解な現象が起きても、それには慣れることもできるし、あえて近づくこともできる。しかし…

「生きている人間が相手の場合、一方的な敵意をもしも向けられたとしたら、避けるか、逃げるか、もうそれしかないですから」

ちなみにこの物件、松原さんは昨年末に再度訪れてみたという。きっかけは偶然知ることとなった、松原さんのあとに入居された方の退去理由だった。その状況は「恐い間取り2」に詳しい。

「僕が契約したとき、空室は2部屋くらいでしたが、今回見に行ったときはほとんどが空いていました」

事故物件住みます芸人が、「ここにはほぼ住めなかった」というほどの怖い物件。それは、過去に起きた事故の記憶よりも、生きている人間が生み出す現実こそが怖い物件だったようだ。

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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