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全力都市 福岡! その成長の理由を探る(4/4ページ)

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気になる福岡市の住宅関連制度は?

賃貸住宅オーナーとして気になるのは住宅関連の制度だ。福岡市が用意している制度には次のようなものがある。

まずは「ブロック塀等除却費補助事業」だ。道路に面している危険なブロック塀等の除却費用の一部を福岡市が助成、対象者はブロック塀等の所有者または管理者で除却工事を行う者としている。ここで疑問となるのが「ブロック塀等」という表記だ。福岡市は「ブロック塀等」の定義を「コンクリートブロック造、石造、れんが造、その他組積造による塀(フェンスなどとの混用の場合も含む)および門柱」としている。

そして除去に関する補助費用は1件あたり上限15万円。要件は、「高さが2.2mを超えるコンクリートブロック塀」「高さが1.2mを超えるコンクリートブロック塀で、控え壁が有効に設けられていないもの」「概ね高さ1m以上のブロック塀で、調査により著しいひび割れ又は傾きが認められ、特に危険な状態にあるもの」とし、除却するブロック塀等の長さに5000円を乗じた額と除却に要する費用(見積もり)の2分の1に相当する額を比較し、どちらか低い額を助成する。

地震が起きた際、ブロック塀の倒壊は歩行者や居住者の命に関わるケースもあるので、福岡市で賃貸住宅を経営するオーナー、今後福岡市での賃貸住宅経営を考えている人は事前にチェックしておきたい。

ほかにも「子育て世帯住替え助成事業」、「高齢者世帯住替え助成事業」があり、いずれも公募期間は 20年4月1日から21年2月26日までとなっている。ただこの助成金に関しては予算内での交付申請受付順となっているので注意が必要だ。

子育て世帯住み替え助成事業は、子ども、または妊娠している者がいる世帯に対して、礼金や仲介手数料など市が定める住み替え経費の2分の1(上限額15万円)、同居・近居、多子世帯にはさらに5万円を加算した額を上限とする制度。

高齢者世帯住替え助成事業は、65歳以上のひとり暮らし世帯などに、礼金や仲介手数料など市が定める住み替え経費の2分の1(上限額10万円)を助成するという制度だ。

これらの制度に関しては細かい要件が数多くあり、オーナーや管理会社が提出しなければならない書類もある。年度ごとに内容が変更される可能性もあるので、逐次福岡市役所のホームページで最新の状況を確認することをお勧めしたい。

コロナショックを乗り越えろ 

世界はコロナショックで揺れている。本稿で記した福岡市内の大規模再開発・整備におけるロードマップも大幅に軌道修正せざるを得ない可能性もすでにでてきているかもしれない。

しかし新しいことにチャレンジし、たとえ失敗したとしてもそれを許容する文化があれば、また新たな取り組みが生まれていく。やがてそれが循環をなし、ビジネスの芽が育っていけば、若く活気のある街づくりへと貢献していくはずだ。

最後に、いまとなっては時代背景やビジネスの質も違うが、良き前例として福岡には辛子明太子の「ふくや」があるということを忘れてはならない。我々が学べることが、きっとあるはずだ。

創業者である川原俊夫氏(1913年1月25日〜80年7月17日)は戦後の中洲で食料品販売のふくやを開業。そこで幼少から戦前までを過ごした釜山で食べた鱈子を唐辛子漬けにした明卵漬(ミョンランジョ)が忘れられず、生の鱈子を仕入れて試作し販売。しかし当時の日本人には辛すぎ、評判は思わしくなかった。そこから改良に改良を重ねたところ、評判が評判を呼び、まもなく店の前には行列ができるまでになったという。いまでは博多名物として誰もが知る辛子明太子の原点がここにある。

この辛子明太子、一説にはピーク時に年1800億円の市場規模があったという。いまではコンビニのおにぎりでも上位にランキングするほどの人気具材。戦後の中洲で産まれた辛子明太子がいかにして国民食になったのか。その理由は川原俊夫氏の人となりにある。

あるとき、他店からふくやに辛子明太子を卸してほしいという依頼があったという。そこで川原氏は、商品の提供はできないが自分で作ってみたらどうかと、作り方を教えたというのだ。もちろん肝心要である出汁のレシピまでは教えなかったようだが、あらかたの製法を教えることで、辛子明太子メーカーが次々に増えていったという。自らが数年にわたって作り上げた辛子明太子で独占的な利益や権利を主張するわけでもなく、皆と共有することで、辛子明太子が「ふくや」のものから国民食になったのだ。

川原氏は「元祖」や「本家」と名乗ることにも全く興味を示さなかった。1979年、個人事業主(80 年に株式会社化)のまま福岡市の高額所得者番付でトップに躍り出たその生涯は、節税や利殖などに一切の関心をもたず、辛子明太子と社会貢献を通じた地域の隆盛をひたすら願うものだったいう。

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