ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

全力都市 福岡! その成長の理由を探る(3/4ページ)

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

ユニークで魅力的 福岡市創業の企業

この制度を活用している、していないは別として、福岡市ではユニークなスタートアップ企業が多い。登山愛好家であれば誰もが知っているアプリ「YAMAP」は、スマートフォンのGPSと連動して山登りにおける遭難防止に役立ち、ルートの記録などを思い出として残せ、ユーザー同士でコミュニケーションを取ることもできる。このアプリを提供・運営しているのがヤマップ(福岡市博多区/13年創業)だ。

ほかにも、自治体が持つ媒体、例えば広報誌やウェブ、庁舎内などのスペースに広告枠を設定し、掲載した広告の一部を自治体の歳入に充て自治体の財源確保を支援するホープ(福岡市中央区/05年創業)は、16年6月に東証マザーズに上場し、広告代理業以外にも新エネルギーなども手がけている。

そして17年5月、スタートアップ法人減税(市税)第1号に指定されたスカイディスク(福岡市中央区/13年創業)は、AIによって製造業における開発や生産ラインにおける最適解を提供するサービスを行っている。ほんの一例であるが、福岡市創業の企業は枚挙にいとまがない。

しかし創業支援に関してはこんな意見もある。

「いい企画なので、もっと広くPRすべき。ただ、創業は若者だけの特権ではないと思うので、世代を超えた施策もぜひ示してほしい」(福岡市の団体職員)

スタートアップという言葉の響きがそう思わせるのか。とくに年齢制限が設けられているわけではないが、若者だけの制度というイメージが強いらしい。また、国家戦略特区全般について、ある福岡市民は次のように話す。

「中洲のアジア美術館や秋のアジアマンス(1990年から始まったアジアとの相互理解を深める交流イベント)などで、市民への啓発活動が最近根付いたように感じる。日韓関係が最悪だったときも、福岡市の雰囲気は悪くなかった。中国に関しても同様。福岡特有のお祭り感はアジアの人たちにとっても相性がいいのでは。だからこそ福岡市は、アジアの玄関口として売り出すしかない」

データで見る福岡市

それでは福岡市の現状や勢い、魅力をデータで見てみよう。

■人口増加数・増加率1位
前述したように人口増加が著しい福岡市。15年(平成27年)の国勢調査によれば、人口増加数が多い都市として、10年〜15年の間で7万938人と2位の川崎市を大きく引き離している。同様に10年〜15年の人口増加率は5.12%と2位の川崎市を1.63ポイント引き離している。さらに人口における10代・20代の割合をみると、福岡市は22.05%で1位となっている。その理由については様々な要因があり、一括りにはできない。本紙で紹介している様々なランキングで上位になっていることからも、やはり住みやすい、働きやすいと街といえるのではないだろうか。


■通勤・通学の利便性 通勤・通学時間(平日の片道換算)
面白いところでは通勤・通学の利便性で世界44都市中第1位といったものもある。いったいどうやって調べたのかも気になるが、よくある住みやい都市のランキング上位に入るジュネーブ(スイス)を上回っているとはただごとではない。

また、対象エリアは少し大きくなるが福岡・北九州大都市圏というくくりでみると、平日の片道における通勤・通学時間は平均38分と、関東大都市圏における平均51分を13分も下回ることからも、いかにストレスなく会社や学校に通うことができるかということが分かる。ちなみにウチコミ!タイムズ編集部(所在地:東京都新宿区)のメンバーの平均通勤時間は77分と、関東大都市圏の平均をなんと26分も上回る。

■外国航路乗降人員25年連続1位
博多港を擁する福岡市の外国航路乗降人員は2017年度で約209万人と、なんと25年連続全国1位という圧倒的な数値を残している。これだけの人が乗降すればそれだけで一大市場のようなものだ。

■クルーズ船寄港回数4年連続1位
博多港へのクルーズ船寄港回数も2015年から18年にわたって4年連続全国1位だったが、19年の速報値では那覇港にその座を譲り2位となった。要因としては17年3月より中国から韓国への団体旅行が禁止され、韓国と日本の2カ国を巡るという魅力的なパッケージのクルーズがなくなってしまったこと。また、近年の中国でのクルーズ市場が急拡大したことによって調整局面に入ったことなどが挙げられる。福岡市港湾空港局クルーズ支援課は、中国市場にかなり依存しているということを鑑み、カントリーリスクを避けるためにも欧米の船会社などにも寄港地に組み込んでもらうよう働きかけをしている。

■在留外国人の増加率1位/増加数5位
在留外国人の増加率と増加数もなかなかの伸びを示している。法務省「在留外国人 統計」によると、2012年〜17年で1万716 人増えており、その増加率は42.6%と、その時点においては21大都市中1位となるほどの数値を示した。ここ10年ちょっとのスパンでみれば累計で3万人以上となり、その比率は福岡市の人口の2%程度まで占めるようになっている。その主な要因としては外国人材の活躍や定着に向けた環境の整備などが挙げられる。例えば福岡市での就職を希望する留学生やグローバル人材に興味を示す企業とのマッチングを促す交流の場「留学生と企業との交流サロン」を定期的に開催、また優秀な留学生を選抜し、奨学金を給付する「よかトピア留学生奨学金」などを用意している。

さらに、対象を福岡県まで広げると外国人の労働者率は09年〜18年の間で3.7倍(全国平均は2.4倍)となり、全国2位(全国1位は沖縄県)という結果に(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調べ)。業種別では宿泊・飲食業が多いようだ。


■成長可能性都市総合ランキング2位/ポテンシャル1位
福岡市全体の可能性を捉えるならば、17年発表の野村総合研究所のレポートが参考になる。そのレポートによれば、福岡市は成長可能性都市総合ランキングで2位、ポテンシャルランキングで1位となっている。
その要因として、空港・港湾・新幹線駅へのアクセスが良好で国際会議も多くビジネス環境が整っていること、多様性に対する許容度が高く、自由で起業家精神に溢れ、市民の街への愛着が強いこと、そしてビジネスにおける環境は整っているが大企業や外資系企業がまだ少なく、アジアに近い地の利を生かし、今後国際的かつ独自の産業形成が見込める伸びしろがあることを理由に挙げている。


■福岡市の家賃相場
福岡市の賃貸住宅における家賃相場はいったいどれくらいなのか。LIFULL HOME'S の家賃相場(20年3月18日時点)機能を使い、福岡市の「ワンルーム・1K・1DK」のカテゴリーからアパート・マンションの家賃相場をそれぞれ調べ、平均家賃を算出してみた。

最も家賃が高いのが中央区の5.20万円、次に博多区の4.57万円、続いて早良区4.54万円、西区4.40万円、南区4.39万円、東区3.90万円、城南区3.79万円となる。もっとも賃貸住宅は立地や、物件状況などの個別要因が多いため一概に家賃相場で語ることはできないが、福岡市で賃貸経営を考えているオーナーがいれば、参考資料として見てほしい。

■福岡市の地価
3月18日に国土交通省が発表した「令和2年地価公示」によると、福岡市は住宅地で6.8%の上昇、商業地で16.5%の上昇を示している。

住宅地については、「顕著な人口増加を背景に、鉄道駅徒歩圏の利便性が良好な地域を中心に引き続き需要が 堅調であり、特に、天神地区・博多地区へのアクセスに優れた地域でのマンション用地に対する需要が強い」とし、商業地については、「規制緩和によりビルの建替えを誘導し新たな空間と雇用を創出する「天神ビッグバン」プロジェクトが進展する天神地区や、地下鉄七隈線の延伸(令和4年度を予定)や博多駅の賑わいと活力を 周辺へつなげていくプロジェクト「博多コネクティッド」が打ち出され一層の繁華性向上が期待される博多地区を中心に、オフィス・店舗等の需要が競合し、高い上昇率を示している」(いずれも原文ママ)とレポートしている。ただし、地価公示は毎年1月1日時点のものとなるため、この数値にコロナショックは織り込まれていない。

次ページ ▶︎ | 気になる福岡市の住宅関連制度は? 

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン『ウチコミ!タイムズ』では住まいに関する素朴な疑問点や問題点、賃貸経営お役立ち情報や不動産市況、業界情報などを発信。さらには土地や空間にまつわるアカデミックなコンテンツも。また、エンタメ、カルチャー、グルメ、ライフスタイル情報も紹介していきます。

ページのトップへ

ウチコミ!