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『新感染半島 ファイナル・ステージ』/ 観客を楽しませるサービス精神旺盛な“ジェットコースター・ムービー”(2/2ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2020/12/29

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カーチェイス以外にも多くの見せ場が用意されているが、本作は人間とゾンビの戦いを描いているわけではない。描かれているのは2000万ドルを我が物にしようとする人間同士の醜い争いだ。本作に登場するゾンビには、当然ながら金を奪おうとする意志などない。本能のままに人間に襲いかかるゾンビたちは、物語を彩る背景に過ぎないのだ。そこが正編との大きな違いであるが、正編が貫いた「愛する者を守る人々のドラマ」という基本線は引き継がれている。

閉鎖された半島内では指揮系統を失った民兵集団がのさばり、我が物顔で暮らしている。ゾンビを怖がるどころか、彼らを捉え、人間の奴隷とともにギャンブル的見世物の道具として使っている。また、半島からの脱出劇で目立つのは女性の活躍である。そういう描写から透けて見えるのは現実の文明批評だが、何も小難しく考える必要はない。製作陣の目的はその種のメッセージを伝えることではなく、観客を楽しませることだ。サービス精神旺盛なジェットコースター・ムービーである本作は、観客に考える暇を与えてくれない。正編を見ていない観客にも安心してお薦めできる娯楽編である。 

『新感染半島 ファイナル・ステージ』
監督:ヨン・サンホ
出演:カン・ドンウォン/イ・ジョンヒョン/クォン・ヘヒョ/キム・ミンジェ/ク・ギョファン/キム・ドゥユン/イ・レ/イ・イェオン
配給/宣伝:ギャガ/スキップ
2021年1月1日よりTOHOシネマズ日比谷ほかで公開
公式HP:https://gaga.ne.jp/shin-kansen-hantou/ 

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この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

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