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『ミッドウェイ』/第二次世界大戦のターニングポイントを新たな視点で描いた注目作(2/2ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2020/09/01

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日本側の主要キャストにも実力派が揃っており、とりわけ豊川悦司の好演が光る。國村隼と浅野忠信には外国映画への出演経験があるが、豊川は初めてだ。初の外国映画出演で、しかも山本五十六を演じるという大役に抜擢されたわけだが、豊川に不安はなかったのではないか。

というのも、かつて豊川は得難い経験をしているからである。彼は1995年7月にテレビドラマ『愛していると言ってくれ』でブレイクする直前、FBI捜査官と日本人ヤクザの逃走を描いた映画『逃走遊戯/NO WAY BACK』(95)に出演しているのだ。

日米合作と謳われたこの作品は、東映ビデオが主体となって製作された実質的な日本映画であるが、アメリカで長期ロケを敢行しており、同社の作品としては<大作>であった。しかも、豊川の相手役としてFBI捜査官を演じた俳優が、後に『グラディエーター』(00)でアカデミー賞主演男優賞に輝くラッセル・クロウなのだ。当時、オーストラリアで名を成していたクロウだが、本国以外ではまだ無名の存在。彼がオーストラリアからハリウッドに拠点を移す前に成立した奇跡のキャスティングであった。豊川にとってクロウとの共演、そして長期の海外ロケは財産となり、本作『ミッドウェイ』の撮影に大いに役立ったに違いない。

渡辺謙や真田広之が海外で活躍し始めたころ、次は豊川悦司だと確信したファンは多かったはずだ。今回ようやく豊川の海外映画進出が実現したことを嬉しく思う。最近、ハリウッドにおけるアジア系俳優の活躍が増えているが、日本人俳優の出番はまだまだ少ないように思う。もちろん、作品の題材次第だが、本作を機に再び日本人俳優への注目が集まり、日本人俳優起用の機運が高まることを願ってやまない。

『ミッドウェイ』
監督・製作:ローランド・エメリッヒ
脚本:ウェス・トゥーク
製作:ハラルド・クローサー
出演:エド・スクライン/パトリック・ウィルソン/ルーク・エヴァンス/アーロン・エッカート/豊川悦司/浅野忠信/國村隼/マンディ・ムーア/デニス・クエイド/ウディ・ハレルソン
配給:キノフィルムズ/木下グループ
2020年9月11日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
公式HP/http://midway-movie.jp/
公式YouTube:https://www.youtube.com/user/kinofilmsweb

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この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

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