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「最終目的は移住ですか?」と聞く人たちへ

東京と南房総、どちらかではなく「どちらも選ぶ」。それが二地域居住のファイナルアンサー(2/2ページ)

馬場未織馬場未織

2017/01/05

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「愛を按分する」ではなく、「愛が増えていく」のが二地域居住

これ地域の話だからいいけれど、東京を「ヒロシくん」、南房総を「タカシくん」とかにしたらややこしい話になりますね。「だめだよ!」と即答されるな。笑。

でも要は、そういうことなんだと思います。
何か「ひとつ」を選ぶのが美徳とされる、あるいはつじつまが合うと、考えられている節があります。
副業はダメ、だって会社へのロイヤリティが低くなるでしょ?
文理は選択、どっちに進学するか、専門を絞りなさい。
浮気はダメ、だって本命に失礼じゃない(ここはその通りかもです!)。

この理屈で世の中すべてを覆い尽さなくてもいいのではないかと思っています。同時進行で進めると、相乗効果でどちらもうまくいくことが、ないとはいえないのです。

少なくとも、“二地域居住”、“多地域居住”というのは、愛情を按分するのではなく、増やしていけるものだと思っています。

もちろん身はひとつですから、ずっとそこにいるか、そうでないか、というところで違いは出てきます。二地域居住者はいつもそこに住んでいるわけではないので、自治会や集落で責任ある立場を担うのはむずかしいのが実情でしょう。「そりゃあ個人にはメリットの多い暮らしかもしれないけれど、二地域居住者ばかり増えてもしょうもないよ、やっぱり腰据えてもらわなきゃ」という意見もあるはずです。

かといって、個人は地域のために生きているというわけではない。地域運営のために個人を縛りつけるような圧力がかかる場所であれば、逃げ出したくなるのが人の常です。
個人のメリットと地域のメリットを重ね合わせる塩梅は、実はむずかしいのです。

それでも二地域居住は地域にも個人にもプラスになる

それでもなお、「二地域居住は、地域にとっても個人にとってもいい」と言える面が多くあると考えています。積極的に“暮らす”ことを知り、地域に愛着を持つ感覚が宿る人がどちらの地域にも増えることになれば、愛は按分ではなくなります。

さらに、そうした二地域居住者がほうぼうでプライベートな都市農村交流をしていくと、「烏骨鶏と犬が迎えてくれるあの家のファンなの」とか、「あのおばあさんのフキの煮物の味がやばい、中毒になる」とか、「わたし、ここから見える山の陰影が本当に好き!」などと具体的かつ個人的に惹きつけられる人が増え、その縁は分かちがたいものになる。地元の人々も、そんな様子から「あまりに日常で気づかなかったけど、いわれりゃこの海の夕日はいいもんだ」と、飾らない土地の魅力を再認識することになります。

そこには、大々的な観光産業も、立派な施設もいりません。1回来てくれる観光客が10000人いるより、100回訪れるファンが100人いるほうがいい。
そう考えたとき、二地域居住は地方創生の鍵になると言っても過言ではないと、わたしは思っています。

と、いうことで。

「最終目的は、移住ですか? それとも移住しないんですか?」
という問いに対しては、
「わたしの目的は移住ではなく、二地域居住です。だから、日々目的達成しています!」
と答えることにします。

これでご納得いただけないでしょうかね? 笑。

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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