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週末は田舎暮らし! を始めよう(7 )

人生観すら変わる。畑を荒らされてもイノシシを憎めないわけ(2/2ページ)

馬場未織馬場未織

2016/02/26

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誰に向かって怒るべき?

対策としては、どうしても荒らされたくない場所にイノシシネットや鉄柵を張り巡らせたり、罠猟免許を持つ人にお願いして箱罠やくくり罠などを設置したり、自分自身も罠猟免許や猟銃免許をとるなどという方法があります。最近は獣害問題への意識が高まり、狩猟免許をとる人が増えているようです。仕留めた命は無駄にせず、ジビエとして美味しくいただく人もいます。

わが家の場合は、山に沿った敷地が続くため山際に柵を設けて侵入を阻止するのがむずかしいので、畑のまわりに防獣ネットを張るだけで何とかしのいでいますが、やはり土手はやられることがあり、頭の痛い問題ではありますね。

イノシシの隠れることのできる藪をつくらないように、まめに草刈りをするというのもひとつの方法です。確かに、視界が遮られることのない見渡しのよい場所などはあまり好まないようです。
 
わたしはたまに、イノシシと遭遇することがあります。夜、車でわが家に到着すると、道を渡ってわが家へ侵入しようとする数頭のイノシシと目が合ったりします。ウリボウと遭うこともあれば、かなり大きくなった子と親が連れ立っている場合もある。本来ならばにっくきイノシシめと思うところですが、その堂々としたふるまいに、思わず笑ってしまいます。わたしたちは勝手に「イノシシが侵入してきた!」と思うわけですが、むこうさまにとっては「たまに人間が来やがる!」といった感じなのでしょう。

いや、笑いごとではないのですけれどね。

そのようにたまに敵の姿を目撃するうちに、むしろ敵対心は減っていきます。相手も、生きるのに必死なのだとわかりますから。知人などは、道のど真ん中でごろんと仰向けになって授乳しているイノシシを見たこともあるとか。相当な被害があった家の人でしたが、それも笑ってしまったそうです。ウリボウって、ちびっこくてかわいいですからね。

地球は、人間だけの棲み処ではありません。
そんな当たり前のことを身を持って知る、田舎暮らしです。

都市生活ではしないような苦労をするなんてごめんだ、と思うかもしれませんが、こういう体験をするといろいろなことを考えます。そもそも人間生活はこの地球に合う発展をしているのだろうか、わたしたちが便利に合理的にと追求してきた暮らしは、どんな犠牲のもとに成り立っているものか、など。日々そんなことを考えるものですから、自分の生き方や暮らし方についても振り返ることになり、きっと人生自体も変化してきます。
 
そう考えると、獣害問題に直面することも、あながち無駄ではないのではないかと、わたしは思っています。

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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