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社会の「分断」を生み出す理由とそれを防ぐ方法(2/2ページ)

遠山 高史遠山 高史

2021/08/27

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“無理矢理に押しつけられる”情報

では何故、今になって、この「分断」が、メディアにここまで取り上げられるようになったのか。

それは、世界中に張り巡らされたネットワークに寄るところが大きいと思っている。インターネットは、人々の負の感情を助長し、蔓延させている。

もちろんコロナ禍の閉塞感が不安を喚起させる事もあるかと思うが、最大の要因は、各々があまりにも簡単に情報を手に入れ、そして、吐き出すことができるというところにあるのではないか。

スマートフォンという便利な機械の画面上には常に最新のニュースが表示される。

一部の勝ち組の華やかな活動、充実した著名人の幸せそうな生活、国と国との摩擦、異なる民族間の争いなど、あらゆる情報が、容易に手に入る。いや、無理やり押し付けられているのだ。

知らなければ、海の向こうの富豪の生活など無縁の物だったはずだったのに、知ってしまえば、我が身と比較したくなるのは、人間の性というものだろう。

他者との比較によって、人は格差を意識し、自分が虐げられていると思い、世間から分断されているのではないかと感じるだろう。

人間の脳みそは、進化していない。ゆえに、物質的には変化したかもしれないが、社会構造の本質も、古い時代と同じである。以前と異なることと言えば、憂慮すべき事柄が圧倒的に増えたということに尽きる。

皆うまくやっているに違いない――。

私だけが、不幸なのでは。国と国とが争っている。このままでは、世界は、バラバラになってしまうかもしれない。

私は、膨張し続ける情報の渦が人々の「分断」感を強めていると思っている。

今や情報は民主化された。誰でも、自由に、情報を手に入れることができる。だが、それは、形なき分断の影を生みだし、人々の不安を増大させている。


イメージ/©︎chompoonut・123RF

「三猿」をご存じだろうか。

有名なところでは、日光東照宮の神馬(しんめ)の厩舎(きゅうしゃ)に彫り込まれている。
人は都合の悪い事を、見たり聞いたり言ったりしがちだが、それはしないほうがよいことがあるぞという戒めを表している。

我々は、三猿に学ぶことが多くあるのではないだろうか。

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この記事を書いた人

精神科医

1946年、新潟県生まれ。千葉大学医学部卒業。精神医療の現場に立ち会う医師の経験をもと雑誌などで執筆活動を行っている。著書に『素朴に生きる人が残る』(大和書房)、『医者がすすめる不養生』(新潮社)などがある。

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