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SNSは人のコミュ力、脳みそを低下させ、退化させるこれだけの理由(2/2ページ)

遠山 高史遠山 高史

2021/02/25

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社会変化について行けない人間の脳みそ

多くのSNSの利用者は、ネットワークの恩恵により、便利になり、快適になったと思い、孤独や不安を埋めることができるようになったと思っているだろう。

だが、その裏で、現実世界との乖離(かいり)が加速し、本来密に交流すべき近しい人々との関係性に不具合を起こしていることもまた現実なのだ。

事実、SNSを長時間使用している人の幸福度は、思いのほか低く、孤独感は払拭できていないという研究結果もある。

人間の脳は、有史以来、ほとんど変化していないと言われている。そして、今の私たちの手元にある、スマートフォンが現れたのは、ほんの十年ほど前のことである。人類史一万年の長きにわたり、我々はせいぜい100人程度のコミュニティの中で、手足を使い、五感を使って、関係性を築いてきたのだが、わずか十年で、時空を飛び越えて見知らぬ誰かと通信できてしまうまでになった。一万年と十年を比較すれば、現在の我々の状況の変化がいかに劇的に起こっているか、理解していただけるかと思う。

要するに、本来あるべき環境から、たった十年で変化を強要されている状況なのだ。適応できずに、なにがしかの不具合を起こす人が出てくるというのは、当然と言えば当然のことかもしれない。

人間は身体の全てを使って、体験し、学習する。

筋トレをイメージしてほしい。負荷をかけたところは発達し、トレーニングを怠れば、衰える。脳にも同じ現象が起こる。本来必要であったはずのプロセスを飛び越えることは、快適で便利なようにうつるが、その裏で私たちは必ず何かを失っているはずなのだ。

かの有名なアップルの創設者、スティーブ・ジョブズ氏は生前、子供達がある一定の年齢に達するまで、厳格にモニタから遠ざけていたという話がある。開発者であるからこそ、自身の製品が持つ、麻薬にも似た毒性を知っていたのではないだろうか。

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この記事を書いた人

精神科医

1946年、新潟県生まれ。千葉大学医学部卒業。精神医療の現場に立ち会う医師の経験をもと雑誌などで執筆活動を行っている。著書に『素朴に生きる人が残る』(大和書房)、『医者がすすめる不養生』(新潮社)などがある。

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