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お彼岸の正しいお墓参り――遺伝子で分けられるお墓と人の関係(3/4ページ)

正木 晃正木 晃

2020/09/14

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お彼岸の語源は、太陽に願いを祈る「日願」から


お彼岸の期間が春分・秋分という設定は日本独特のもの

お彼岸は、春分・秋分の日を中日として、その前後七日間にあたる。この期間は、彼岸会法要やお墓参りの時期とされる。

彼岸の語源は、仏教に求められる。古代インドの公式言語だったサンスクリット(梵語)の「パーラミター(波羅蜜多)」で、「到彼岸」と訳される。

ここでいう「彼岸」は悟りの世界とかあの世を意味し、迷いの世界とかこの世を意味する「此岸」と対になる。

ただし、お彼岸の期間が春分・秋分という設定は、仏教と関係がない。言い換えると、日本独特の行事なのである。

歴史をたどると、平安初期の大同元年(806)、諸国の国分寺の僧侶に命じて、春秋二仲月別七日に『金剛般若経』を読ませたという記録が、『日本後紀』に書かれている。その後、平安中期以降、浄土教が大流行して、彼岸の中日に太陽に向かって念仏すると、極楽往生するのに効果絶大とみなされるようになった。

また、仏教と関係なく、「日の伴」と称して、春分・秋分の日に、太陽に向かって終日、祈願する民間信仰がすでにあったともいわれる。

彼岸の由来は、仏教用語ではなく、「日願」だったという説もある。この「日願」は、太陽を「お天道様」もしくは「天道神」として崇める農耕儀礼だったようだ。

さらにいえば、古来、春分は農耕開始の時期とほぼ重なるとともに、山や海のかなたにいる祖霊や死霊が子孫を訪れる日でもあった。

このあたりは、縄文的な要素と弥生的な要素が絡み合っている可能性がある。ひょっとしたら、素朴な信仰がいつしか「文明化」されていったのかもしれない。

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この記事を書いた人

宗教学者

1953年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。専門は宗教学(日本・チベット密教)。特に修行における心身変容や図像表現を研究。主著に『お坊さんのための「仏教入門」』『あなたの知らない「仏教」入門』『現代日本語訳 法華経』『現代日本語訳 日蓮の立正安国論』『再興! 日本仏教』『カラーリング・マンダラ』『現代日本語訳空海の秘蔵宝鑰』(いずれも春秋社)、『密教』(講談社)、『マンダラとは何か』(NHK出版)など多数。

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