お彼岸の正しいお墓参り――遺伝子で分けられるお墓と人の関係(4/4ページ)
正木 晃
2020/09/14
墓参りだけで終わらせてはいけない?
最終的には、日本仏教が以上にあげたさまざまな要素を吸収して、仏事に変換させ、お彼岸が定着したらしい。こうして、菩提寺やお墓は、仏教的な意味の「彼岸(悟りの世界)」を具現化しているという教義が生まれた。
このコラムの『新型コロナで帰省自粛、リモート帰省やインターネット墓参りで考える「墓参」の本当の意味』で述べたように、一般人を対象とする菩提寺の制度が成立したのは江戸初期のことだから、お彼岸が定着したのも、そう古い話ではない。
宗教人類学の第一人者、佐々木宏幹先生によれば、お彼岸の期間に、お寺参りすることは、仏の力によって、先祖の霊を幸福にするためである。お墓参りすることは、個々人が「ほとけ」になった祖霊をなぐさめるためである。これらの行為をあわせて、お彼岸とは、仏の力を回向して、彼岸(あの世)の先祖の霊を幸福にするための行為とみなされたのである。
とすれば、お彼岸はお墓参りだけでは済まない。お寺の本堂にあがって、ご本尊を礼拝するお寺参りが欠かせないことになる。
みなさんも、お墓参りの際は、ぜひお寺参りもなさっていただきたい。そうしないと、お彼岸の目的はまっとうされない。
この記事を書いた人
宗教学者
1953年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。専門は宗教学(日本・チベット密教)。特に修行における心身変容や図像表現を研究。主著に『お坊さんのための「仏教入門」』『あなたの知らない「仏教」入門』『現代日本語訳 法華経』『現代日本語訳 日蓮の立正安国論』『再興! 日本仏教』『カラーリング・マンダラ』『現代日本語訳空海の秘蔵宝鑰』(いずれも春秋社)、『密教』(講談社)、『マンダラとは何か』(NHK出版)など多数。