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空間と心のディペンデンシー

求める理想によって、こころが病む(3/3ページ)

遠山 高史遠山 高史

2020/01/31

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理想を捨てたことで手に入れた “生きやすさ”

それから、1年後、元同僚にK子さんから、結婚の知らせが届いた。会社を辞めてから、小さなラーメン屋で働いていたが、そこによく来る客と付き合うようになり、ほどなくして結婚したそうだ。

結婚祝いを携えて同僚がK子さんを訪ねると、少し肉付きが良くなったK子さんが、出迎えてくれた。そこは、小さなアパートでK子さんが、過去に話していた理想の一戸建てではなかったが、狭いながらも日当たりがよく、小ぎれいに片付けられていた。

玄関には、小さな写真が飾られていてドレスを着たK子さんと、タキシード姿の男性が写っていた。相手の男性は元彼のような、いわゆる「イイ男」ではなかったが、真面目で誠実そうであった。寝室にはベビーグッズが揃えてあった。

茶菓子を並べながらK子さんは、「理想と全然違うけど、今は幸せだよ」と言って大きなお腹をなでた。

 

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この記事を書いた人

精神科医

1946年、新潟県生まれ。千葉大学医学部卒業。精神医療の現場に立ち会う医師の経験をもと雑誌などで執筆活動を行っている。著書に『素朴に生きる人が残る』(大和書房)、『医者がすすめる不養生』(新潮社)などがある。

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