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まちと住まいの空間 第17回【ブラタモリ/白金編その3】

白金の高級感が維持できなくなりつつある時代の変化(4/4ページ)

岡本哲志岡本哲志

2019/12/30

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 白金の「ほどよい静けさ」はどのようにできたのか

これからは最後のプラス1の条件となる。「プラチナ通り」と呼ばれる通りの歩道でエンディングをむかえる(写真6)。最後のテーマは「ほどよい静けさ」。

高級感漂う街はなんとなく自然に出来上がったわけではないし、「シロガネーゼ」というキャッチコピーが一人歩きして高級感をつくりあげたわけでもない。白金を高級にした背景には、「危機を乗り越え」「危機を止める」があった。「プラチナ通り」はその象徴的存在であろう。

この道路は環状4号線として品川駅まで通す予定だった。ただ、予算が足りなくなり、一時ストップ。東京都全体の道路整備の優先順位からも緊急性をおびていなかったと思われる。やや他力本願的だが、そのことが白金の高級感を熟成させる上で大いに意味を持った。「ほどよい静けさ」が奇しくも実現し、そこに「シロガネーゼ」とネーミングされた子育て世代の主婦が主人公となって彩る。

しかしながら、こうした高級感は許されないようだ。品川駅まで道路を貫通させる状況へと変化する兆しがある。これは「街とは何か」を考えさせる絶好の機会かも知れない。街のために自然を守る、環境を守ることを地域エゴとしてきた時代はとうに過ぎ去っている。

白金自体はそのような時代に高速道路の無謀な計画を「ノー」といい、自然教育園も、旧朝香宮邸も守ってきた歴史がある。その意味で、道路計画も単に車をスムースに流す全体計画で押し通すべきではない。道路計画も、基本は住む人たちを困らせるためのものではないはずだから。

 

 

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この記事を書いた人

岡本哲志都市建築研究所 主宰

岡本哲志都市建築研究所 主宰。都市形成史家。1952年東京都生まれ。博士(工学)。2011年都市住宅学会賞著作賞受賞。法政大学教授、九段観光ビジネス専門学校校長を経て現職。日本各地の土地と水辺空間の調査研究を長年行ってきた。なかでも銀座、丸の内、日本橋など東京の都市形成史の調査研究を行っている。また、NHK『ブラタモリ』に出演、案内人を8回務めた。近著に『銀座を歩く 四百年の歴史体験』(講談社文庫/2017年)、『川と掘割“20の跡”を辿る江戸東京歴史散歩』(PHP新書/2017年)、『江戸→TOKYOなりたちの教科書1、2、3、4』(淡交社/2017年・2018年・2019年)、『地形から読みとく都市デザイン』(学芸出版社/2019年)がある。

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