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牧野知弘の「どうなる!? おらが日本」#10 東京にも「街間格差」の時代が来る(2/4ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2019/07/01

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限界を迎える東京の「集客力」

人が集まる街は不動産が上がる、これは不動産を業としている人ならば誰しもが実感することだ。だが、東京都の発表によれば東京都の人口はおおむね2025年ごろがピークでその後は減少を始めるという。都区部に限ってみても2030年頃から人口は減少する。エリアにもよるが、これまで一方的に人を集めてきた東京の「集客力」はそろそろ限界を迎える。その原因は住民の高齢化だ。

東京都の高齢者人口推計によれば、2017年9月15日現在の都区部における65歳以上の高齢者人口は201万1千人と初めて200万人の大台を超えた。この数値は20年前の約1.7倍に及ぶ。しかもこのうち75歳以上の後期高齢者の人口は101万人。なんと高齢者の半数以上が75歳以上の後期高齢者だ。

時間軸をあと10年から20年先へと引き伸ばしてみよう。都区部において大量の相続が発生することが容易に予測できる。そして相続人の多くはすでに家を所有している世代。親の家に住む人もいるだろうが、これを賃貸や売却に出す人が多いはずだ。

もうひとつの環境変化が、都区内に多く眠る農地だ。今でも世田谷区や練馬区を歩くと多くの都市農地を見ることができる。これらの農地は生産緑地制度に登録した土地が多く、固定資産税が宅地並み課税とはならずに農地並みの課税として取り扱われている。

この生産緑地制度に登録するには農業を30年間継続することが条件となっており、東京都内では約3300 haが生産緑地に登録されている。都区部では練馬区は189 ha、世田谷区でも95 haもの土地が生産緑地となっているのだ。

この営農30年の期限が最初に到来するのが2022年だが、現在登録されている生産緑地のおよそ8割が同年に期限切れを迎えるとされている。期限満了と同時に売却や賃貸アパートなどとしてこれらの土地がマーケットに供給されると東京の地価は、供給圧力に押されて大幅に下落する可能性が囁かれている。

生産緑地制度の期限延長や条件の緩和などがすでに打ち出されてはいるが、生産緑地所有者世帯の多くで高齢化が進み、円滑な事業承継が進んでいないのが実態だ。また期限切れの生産緑地を借り上げて農業を営む法人個人がどれだけ出現するかも不透明だ。

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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