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体験談から悟る

介護関係者の言葉を鵜呑みにするな(2/3ページ)

鬼塚眞子鬼塚眞子

2019/03/20

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“介護予防住宅改修”は行政によって若干違うところもあるようだが、手すりの取り付け、段差の解消、洋式便器への変更、引き戸への扉の変更などが対象となる。

利用者はいったん改修費用の全額を支払い、その後に申請をして改修費用の1割または2割の支給を受けることとなる。

所定の手続きを踏み、Aさんの母は自宅内で手すりを付けることができた。床も転倒しないような材質に介護保険を使って変更したかったが、それでは支給限度基準の20万円をオーバーしてしまうので、貯金でその費用を賄った。

スローペースではあったが、母は以前の元気を取り戻していった。Aさんは母が本格的な介護になるまでは遠い未来のように思えた。

Aさんには、弟がいたが、お互い家庭を持ち、子供が成長するにつれ、実家に足を延ばす回数も次第に少なくなっていった。母の入院の時の見舞いもすれ違いになり顔を合わせることもなかった。

母のことは気にはなったが、Aさんも弟も仕事が忙しいこともあって、都合が付く度に母の様子を見に行った。母の状態は変らなかった。

だが、どうしようもなく変っていくことがあった。それが実家の周辺の店が少しずつ撤退したり、閉店していくことだった。実家の近くにこじんまりしたスーパーがあり、日常生活はそこでまかなえるため、母は困っている様子もなかった。
近所の友達も良くしてくれていることもあって、母は平凡だが毎日を楽しんでいるようにも思えた。

介護認定を受けて1年が経過したころ、Aさんは介護関係者に会って、「いつまで在宅介護をすればいいですか?」と訪ねた。

介護関係者は、「ご家族さんによって違います。最後まで自宅で看る家庭もあれば、施設に入れられる家庭もあります」。すかさずAさんは「では、施設に入れるタイミングはいつにすればいいですか?」と聞き返した。「便を壁にこすりつけたり、夜中に何度もトイレにつれて行かなければならなくなったときに、施設を検討する家庭が多いですね」と15年以上のキャリアを誇る、その人は答えた。「まだ母を施設に入居させなくてもいいですね?」とAさんが聞くと「大丈夫です!!私たちが一生懸命お世話をさせていただきます」と答える介護関係者をAさんは頼もしく思った。

それから7年の年月が経過した。Aさんの母は85歳になっていた。母は転倒・骨折で1年の間に2度も救急車で運ばれることとなり、さすがに実家で一人暮らしをさせることにAさんも弟も限界を感じているようになった。

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この記事を書いた人

一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会理事長

アルバイトニュース・テレビぴあで編集者として勤務。出産を機に専業主婦に。10年間のブランクを経て、大手生保会社の営業職に転身し、その後、業界紙の記者を経て、2007年に保険ジャーナリスト、ファイナンシャルプランナー(FP)として独立。認知症の両親の遠距離介護を自ら体験し、介護とその後の相続は一体で考えるべきと、13年に一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会(R)を設立。新聞・雑誌での執筆やテレビのコメンテーター、また財団理事長として、講演、相談などで幅広く活躍している。 介護相続コンシェルジュ協会/http://www.ksc-egao.or.jp/

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