介護と相続の現場から(1/3ページ)
鬼塚眞子
2018/10/16
唯一の財産が不動産だということも多々いらっしゃると思うが、介護のために、とんでもない相続になってしまうこともある。そんな2つの実例を紹介したい。
私が理事長を務める(社)介護相続コンシェルジュ協会は、介護や相続に関する相談だけでなく、暮らしに関わる悩みや疑問を弁護士や税理士、金融FPなどがチームを組んで相談に乗っている。
そんな中で多いのが不動産の相談だ。介護をきっかけとする不動産の相談は、①親が自立型の介護施設に入居するために売却したい、②親の住居を子どもに生前贈与したい、③元気なうちに子どもの近くに引っ越したいというパターンが多い。
親が健康なら、マネーシミュレーションをして、生前贈与にかかる税金、特定の子どもに不動産を生前贈与した場合の、特別受益に関連する法的整備などのアドバイスをする。たとえば、売却するケースであれば、そのお金を介護費用にあてるかどうかなど、法律、税務、金融のトータルで答えを見出していくことになる。
言うまでもないが、不動産の売却は、“法律上の契約”行為だ。当事者間で「売ります」という意思と「買いたい」という意思が合致してはじめて成立する。あくまでもスムーズに売買手続きが完了するのは、不動産所有者に判断能力がある場合だ。
今や超高齢化が進む日本の問題ともいえる認知症と所有者が判断された場合はどうか。私たちに持ち込まれた相談実例を紹介したい。
介護施設に入居するために、不動産売却を希望されているとの相談が、娘さんから寄せられた。娘さんのヒアリングでは親御さんは「認知症のペーパー検査でも高い得点を出しているので、判断能力は、十分にあります」とのことだった。
この記事を書いた人
一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会理事長
アルバイトニュース・テレビぴあで編集者として勤務。出産を機に専業主婦に。10年間のブランクを経て、大手生保会社の営業職に転身し、その後、業界紙の記者を経て、2007年に保険ジャーナリスト、ファイナンシャルプランナー(FP)として独立。認知症の両親の遠距離介護を自ら体験し、介護とその後の相続は一体で考えるべきと、13年に一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会(R)を設立。新聞・雑誌での執筆やテレビのコメンテーター、また財団理事長として、講演、相談などで幅広く活躍している。 介護相続コンシェルジュ協会/http://www.ksc-egao.or.jp/