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賃貸経営・不動産投資、困ったときのフクマルさん ♯3 〜増える高齢者と賃貸住宅〜(2/3ページ)

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高齢者を受け入れるための対処方法

その対処方法として、国土交通省から21年6月7日に、賃貸借契約の解除及び残置物の処理を内容とした、死後事務委任契約等に係る「残置物の処理等に関するモデル契約条項」が策定されました。

単身高齢者の居住安定確保を図るため、単身の高齢者が死亡した際に契約関係及び残置物を円滑に処理できるように、賃借人と受任者との間で締結するというもので、入居中の単身高齢者が万が一死亡した場合、残置物の廃棄や指定先への送付などの事務を第三者の受任者に委託するという内容です。

これは、単身高齢者が契約前に「廃棄しない残置物」を、相続人などに渡す家財類を指定するとともに、その送付先を明らかにして、受任者は入居者の死亡から一定期間が経過し、かつ、賃貸借契約が終了した後に、「廃棄しない残置物」以外のものを廃棄します。ただし、換価しお金に変えられることができる残置物については、換価するように努める必要があります。そして残置物の処理に関しては、死後事務委任契約を締結しておくことが有効になる、という条項を組み入れたのが今回の契約書案です。

その内容をもう少し詳しく説明します。

①賃貸借契約の解除として、賃借人の死亡時に賃貸人との合意によって賃貸借契約を解除する代理権を第三者の受任者に与えます。そうすることで契約は解除でき、それ以上の債務が発生しないよう速やかに賃貸借関係を処理できます。

②入居中の単身高齢者が万が一死亡した場合、残置物の廃棄や指定先への送付などの事務作業も、第三者の受任者と事務委任契約を締結しておくことが有効である。

そこで、気になることがあります。それは、国が出している案に対して“有効になる”という言葉が出ているように“無効もある”ということです。

例えば個人の保証人がいる場合、保証人に残置物の処理を依頼することもできるため、残置物リスクに対する不安感は生じにくいという考えなのでしょう。そのため、民法第90条(『公序良俗』公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は無効とする)や、消費者契約法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)に違反して無効となる可能性が出て、最終的には個別の事案における具体的な事情を踏まえ裁判所で判断されるため、注意が必要とされています。これは、保証人が相続拒否などをした場合や、連絡がつかないなどが考えられます。

保証人がいる場合は、保証人にもその旨の書面対策が必要になります。そしてまずは、賃借人及び受任者がその内容を十分に理解したうえで、任意に同意していること、これが一番必要です。ただし、この受任者は大家さんではできないのです。

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この記事を書いた人

株式会社アトリエハウス 代表取締役・「白ゆり大家の会」主宰

保育士、製菓会社、建売会社のCADオペレーター・現場審査立会い業務を経て賃貸仲介会社へ転職。その後、地元老舗不動産会社から事業拡大のためヘッドハンティングされ、宅地開発、建売事業を行いながら賃貸管理会社・建設会社を設立。全営業責任者となり、建築営業において全国NO.1の営業表彰を受ける。2014年、アトリエハウスを設立し独立。不動産コンサルタント・講師業として活躍。不動産会社、建築会社や賃貸住宅オーナー向けに講習会も行う不動産のエキスパート。 資格:ファイナンシャル・プラニング技能士2級、宅地建物取引士、2級建築施工管理技士、賃貸不動産管理士、住宅ローンアドバイザー、不動産キャリアパーソン、損害保険代理店資格、占術鑑定士(四柱推命・気学<九星・方位・家相学>)、保育士・幼稚園2級教諭。

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