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牧野知弘の「どうなる!? おらが日本]#1 大都市が空き家天国になる日(2/5ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2017/12/18

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雇用機会均等法、大都市法の改正がライフスタイルを変えた

首都圏でも今後、急速にこの高齢化問題が進行する。国立社会保障・人口問題研究所の調べでは、首都圏人口は2015年から20年頃にピークを迎え、その後は減少していくとしている。人口の減少とともに深刻になるのが高齢化だ。

現在、首都圏(1都3県)の人口は3505万人(2014年)と言われているが、そのうち高齢者が占める割合は23%ほどだ。この数値は今後、年を追うごとに高まり2040年には約35%になることが予測されている。首都圏人口の3人に1人が高齢者になる計算だ。

首都圏の高齢者の多くは、高度成長期以降地方から首都圏にやってきて職を得て、家族を持ち、郊外部を中心に家を構えた世代である。その世代の代表ともいえる団塊の世代も今ではその多くがリタイアして首都圏郊外に住み続けている。

そしてその子供たちのライフスタイルは、親たちとは異なり、郊外から長時間通勤をせずに都心に居住するようになっている。背景には夫婦共働きがあたりまえになり、子供を保育所に預けて夫婦ともに働くためには郊外に住宅を構えることはありえず、職場の近い都心部に居住することが必須になったことだ。

この動きを加速させたのが、1997年男女雇用機会均等法の改正によって女性の深夜労働や休日勤務が可能になったこと、1996年大都市法の改正によって東京都心部の容積率が大幅に緩和されて、工場跡地などに超高層マンションが建設されたことだ。

人々のライフスタイルは変わり、昭和の時代の家族像である、サラリーマンのお父さんに専業主婦、子供二人の四人家族は消え失せ、夫婦共働きで子供はいないか一人、保育所に預けるために都心部に居住するのが平成の家族像になったのである。

子供が郊外の親の家に戻らない限りは、現在の高齢者世帯の多くがやがて高齢者単身世帯となり、死亡により空き家化することは容易に予想できる。つまり大量の空き家予備軍がすでに首都圏郊外に潜在しているのだ。

次ページ ▶︎ | 都市部の空き家、その多くはマンションが占める 

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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