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賃貸物件で殺人事件が起こったら~居住者、入居者編~(2/2ページ)

森田雅也森田雅也

2017/12/13

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さらに、ある土地をマイホーム建設のために購入した買主が、決済前日に約25年前に家族内で殺人があったこと、その二年後に娘が自殺したことを知ったという事情では、売主に告知義務を認めた裁判例もあります。
この裁判例は、殺人、自殺と立て続けに起きたことは近隣住民の意識にも根強く残り、心理的瑕疵が強く、たとえ約25年経過していても告知義務が解消されるほどに、瑕疵が希薄化されているとはいえず、マイホーム購入を目的としている買主がこの事実を知っていれば、通常その土地を購入しないと考えられることなどから、売主の告知義務を認めたと考えることができます。

このように殺人事件の場合にはかなりの長期間にもわたり告知義務があります。しかし、告知義務の期間は、判例法理により形成されているものなので、不動産会社から告知されなかったことをもって、安心してはいけません。後に、裁判になり告知義務がありましたと認められることはありますが、その事実を知っていれば住まなかったという場合には手遅れです。ご心配な方は、入居するときに不動産会社に聞いたりすることをおすすめします。

また、居住している建物の別室で殺人事件が起きてしまっても、賃貸人に引越し代や家賃の減額請求をすることはできないとされています。なぜならば、その殺人事件が賃貸人によって引き起こされたものならまだしも、賃貸人にも不測の事態で、帰責性がないからです。引越しなどを希望する場合は、賃貸人と話し合って交渉して解決するのがベストでしょう。

以上のように、告知義務などは判例法理で形成されているところなので、ご心配な方は購入時、入居時に確認するのが一番でしょう。

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この記事を書いた人

弁護士

弁護士法人Authense法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)。 上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。 [著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。 [担当]契約書作成 森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。

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