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不動産業界の悪しきカルチャーを斬る(1)

不動産屋が「グレーな商売」のイメージから抜け出せない本当の理由(2/2ページ)

大友健右大友健右

2016/02/22

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「ヌキ」はご法度の熾烈な戦場

そして、「水曜が定休日」の商習慣と同じように、「顧客の利益よりも自社の利益を最優先」という不動産業界独特の悪しきカルチャーも自然に受け入れられていきます。

この場合の顧客とは、家を借りたい、買いたいというお客さん、および家を貸したい、売りたいというオーナーを指します。優先するのは「自社の利益」ですから、ときには他社との競争も熾烈になります。

これは、私が新人営業マンだったころの話。業界のイロハもわからず、ADとか担ボーといった言葉も教えられていませんでしたが、入社2日目でマンションの購入契約をしてくれる買い主を見つけることができました。

ところが、ローンの審査がなかなかおりずに手間取っていたところ、その買い主は別の不動産会社を通してほかの銀行でローン審査を行ない、そちらで話を進めてしまったのです。いま思えば、通りにくいローンの審査をパスする方法などいくらでもあるのですが、経験不足のために顧客を横取りされてしまったわけです。

すると、そのことを聞いた私の上司は、烈火のごとく怒ってこう言いました。
「ヌキをやられたのか。どこの業者だ? 一緒に来い!」

そのとき私は、決まりそうになっていた契約を横取りする行為を業界用語で「ヌキ」ということを知ったのです。そして、すごい勢いでヌキをやった会社に怒鳴り込む上司の様子から、それが業界内のタブーであることも理解しました。

悪しきカルチャーが業界を衰退させる

さて、私の講演を聞いて、「ADを受け取るのはおかしいことなのですか?」と驚いていた参加者はおそらく、入社当時の私のようにADというものをまだ理解していない新人か、あるいは業界のカルチャーにどっぷりハマって違法うんぬんを考える余地のなくなってしまった人なのでしょう。

しかし、何度も繰り返しますが、そういうカルチャーをもった業界は、必ずや世間から見放され、時代の流れに追い抜かれ、衰退していきます。そうならないために私ができるのは、そのことを多くの人に知ってもらい、危機的な状況を業界の内部の人にも気づかせることです。

そこで、これからしばらくは、問題意識を感じて業界を飛び出した私の目から見た、業界の悪しきカルチャーについて語っていきたいと思います。

今回の結論
●不動産会社には、「慣習としてのAD」がグレーな報酬だと認識していない人がほとんど。
●「仲介手数料」の枠を超えるお金は、「AD」や「担ボー」と呼ばれて脱法的にやりとりされる。
●大切なのはそこで働く人を糾弾することではなく、業界のカルチャーを変えていくことである。

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この記事を書いた人

株式会社ウチコミ 代表取締役 株式会社総研ホールディングス 代表取締役 株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役 1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち、大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。 現在、株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役として、住宅リフォームを中心に事業を展開。また、株式会社ウチコミ 代表取締役として、賃貸情報サイト「ウチコミ!」を運営。入居の際の初期費用を削減できることから消費者の支持を集める。テレビ・新聞・雑誌などメディア出演も多数。

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